岐阜新聞 映画部

いま、どこかで出会える作品たち

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地主階級の理不尽さや女性の自立の萌芽が見られる重層的な映画

2019年09月28日

田園の守り人たち

©2017 - Les films du Worso - Rita Productions - KNM - Pathe Production - Orange Studio - France 3 Cinema - Versus production - RTS Radio Television Suisse

【出演】ナタリー・バイ、ローラ・スメット、イリス・ブリー
【監督】グザヴィエ・ボーヴォワ

自立した女性が作る、新しい時代

 第一次世界大戦(1914年~1918年)は、列強各国の領土や植民地の権益をめぐって起こった、世界的規模の帝国主義戦争である。この人類最初の世界戦争は、それまでの職業軍人が中心になって闘ってきた戦争から、一般市民を巻き込んだ国家を挙げた総力戦となっていったのである。

 本作で描かれるのは、フランスの絵画のような田園風景の中で、銃後の守りをしている女たちが逞しく生きている物語であると同時に、当時の地主階級の理不尽さや女性の自立の萌芽が見られる重層的な映画である。

 激しい戦いをしている西部戦線に男たちを送り出していた農園経営の未亡人オルタンス(ナタリー・バイ)とその娘ソランジュ(ローラ・スメット)の一家に、働き手として雇い入れられたフランシーヌ(イリス・ブリー)。地主であり一家の長であるオルタンスは、自由闊達でよく働くフランシーヌを家族同然とばかりに扱う。働き手としての彼女は、実に有能な労働者なのだ。

 西部戦線から帰ってくる息子や夫。戦場では新兵器の毒ガスに怯えているが、束の間の休暇は彼らを緊張から解いてくれる。そんな中、次男のジョルジュは、フランシーヌと良い関係になる。また、第一次大戦に途中参戦したアメリカの若き軍人たちは、田舎のフランス娘には陽気でおおらかに見え、ソランジュもいい感じだ。大戦中にロシア革命が起こり、大戦後は疲弊したヨーロッパに変わってアメリカが台頭してくるが、フランスの農村にも新しい風が吹き始めたのだ。

 しかし、地主のオルタンスは急激な変化は許さない。ましてや、息子のジョルジュをたかが使用人のフランシーヌに寝取られるなんて許されるはずがない。というわけで、理不尽にも追い出してしまうのである。

 映画は戦後も描いていく。そこには、子どもを抱いたフランシーヌがいる。おそらくジョルジュの子だ。そして、彼女は舞台で逞しく歌を歌う。自立した女性が新しい時代を作っていくのだ。

語り手:ドラゴン美多

中学三年の時に見た「日本沈没」「燃えよドラゴン」のあまりの面白さから映画の虜になって四十数年、今も映画から夢と希望と勇気をもらっている、ファッションチェックに忙しい中年のおっさんです。

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語り手:ドラゴン美多

中学三年の時に見た「日本沈没」「燃えよドラゴン」のあまりの面白から映画の虜になって四十数年、今も映画から夢と希望と勇気をもらっている、ファッションチェックに忙しい中年のおっさんです。

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