岐阜新聞 映画部

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銃後を守る女たちの戦い

2019年09月28日

田園の守り人たち

©2017 - Les films du Worso - Rita Productions - KNM - Pathe Production - Orange Studio - France 3 Cinema - Versus production - RTS Radio Television Suisse

【出演】ナタリー・バイ、ローラ・スメット、イリス・ブリー
【監督】グザヴィエ・ボーヴォワ

美しい映像のもと語り継がれる100年前の戦争の犠牲

 第一次世界大戦下のフランスの田園地帯が舞台。未亡人のオルタンス(ナタリー・バイ)は長男と次男の2人を戦場に送り、今は、近所に嫁いだ娘のソランジュ(ローラ・スメット)とともに農作業に追われている。独り身の兄アンリはすでに高齢で、重労働には耐えられない。ソランジュも夫を兵に取られ、女手によって守るしかない農場は無下に広大に見える。

 ある日、戦功を上げた長男のコンスタンが休暇で戻って来るが、彼の口から出るのは悲惨な前線の話ばかり。仕事の手は足りていないのに、またすぐに戦場に送り出さなければならない。

 収穫時期が迫り、オルタンスは孤児院出身のフランシーヌ(イリス・ブリー)を雇い入れる。働き者の彼女は皆に気に入られ、家族のように暮らし始める。

 一見、平穏な農村生活に影を落とすのは戦争の暗い現状で、休暇で戻ったソランジュの夫クロヴィスも、荒んだ心を酒で誤魔化すしかない。そんな重苦しい雰囲気を和ますのは、フランシーヌの歌声だった。オルタンスはそんな彼女の働きを褒め、契約の延長を決める。

 ある日、休暇でオルタンスの次男ジョルジュが戻って来るが、そんなフランシーヌの魅力に惹かれ、ふたりは手紙の約束を交わす仲になる。

 そこに、長男コンスタンの訃報が届く。それが引き金となって、脆くも崩れ始める女たちの絆が辛く痛い。アメリカ兵との関係を疑われるソランジュの素行を世間の目から隠すために、オルタンスはフランシーヌを身代わりに立て、ジョルジュとの仲も切り裂く。

 村の女たちが総出で行う刈入れは、逆光に輝く黄金の穂先が美しく、ミレーの絵画のような神々しさがある。また、農家の仄暗い灯のもと営まれる日々の生活風景を、荘厳な雰囲気にまで高めたキャロリーヌ・シャンプティエの撮影は素晴らしい。そして、ミシェル・ルグランの音楽も慎ましやかだが、心に響く。 戦場が映し出されることはないが、100年前の戦争の未だ癒えることのない“犠牲”を静かに語る秀作である。

語り手:覗き見猫

映画にはまって40数年。近頃、めっきり視力が衰えてきましたが、字幕を追う集中力はまだまだ大丈夫です。好きなジャンルは? 人間ドラマ…面白くない半端な回答…甘い青春映画も大好きです。

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語り手:覗き見猫

映画にはまって40数年。近頃、めっきり視力が衰えてきましたが、字幕を追う集中力はまだまだ大丈夫です。好きなジャンルは? 人間ドラマ…面白くない半端な回答…甘い青春映画も大好きです。

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