岐阜新聞 映画部

いま、どこかで出会える作品たち

Meet somewhere

シチュエーションコメディの名手・矢口監督によるミュージカル

2019年09月23日

ダンスウィズミー

©2019『ダンスウィズミー』製作委員会

【出演】三吉彩花、やしろ優、chay、三浦貴大、ムロツヨシ、宝田明
【原作・脚本・監督】矢口史靖

日頃の嫌なことを忘れさせる鉄板の娯楽映画

 私は和製ミュージカル映画と聞くと、何だか観る前からウキウキしてくる。戦前のオペレッタ時代劇の傑作『鴛鴦歌合戦』(1939年)や、戦後のクレージーキャッツもの、美空ひばりものなどを名画座や回顧上映で観ると、幸福感のアドレナリンはMaxに達した。ここ数年でも『愛と誠』(2012年)という傑作ミュージカルを観た時、他の観客の「そうきたか!」「これ、どうやって決着付けるんだ?」などという普段は鬱陶しい私語も、映画の面白さを倍加させ観客同士の一体感を感じさせたものである。

 一つの設定から話がどんどん膨らんでくるシチュエーションコメディの名手・矢口史靖監督の最新作は、怪しげな催眠術師(宝田明)に「曲が流れると歌って踊らずにいられない体」にされてしまったキラキラOL鈴木静香(三吉彩花)が、その術を解いてもらう迄のドタバタ珍道中をミュージカル仕立てにした明るく楽しい娯楽映画である。

「突然歌って踊りだす」というミュージカルの約束事を、「催眠術にかかったから」といくら言い訳しても、ミュージカルに違和感ある人が納得するわけがない。違和感のない私にとってはあまり関係のない話で、どうせあり得ないシチュエーションなんだから、話はご都合主義の単純なストーリーで一向に構わない。歌とダンスがいかに素晴らしいかを堪能させてくれ、それに加えてお話もそこそこ良ければ、ミュージカル映画としては成功しているのである。

 その歌とダンスが「チープである」との声も聞くが、何と比べてチープであるのかそういう人に聞いてみたい。例えシャープさはなくとも、私が少ないながらも舞台で観た生のミュージカルに比べても、格段に劣るとは思えない。

 話に対するツッコミどころは山のようにあるが、それを指摘しても何のプラスにもならない。矢口監督の相変わらずのサービス精神満載の、観ている間だけは日頃の嫌なことを忘れさせる鉄板の娯楽映画である。

語り手:ドラゴン美多

中学三年の時に見た「日本沈没」「燃えよドラゴン」のあまりの面白さから映画の虜になって四十数年、今も映画から夢と希望と勇気をもらっている、ファッションチェックに忙しい中年のおっさんです。

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語り手:ドラゴン美多

中学三年の時に見た「日本沈没」「燃えよドラゴン」のあまりの面白から映画の虜になって四十数年、今も映画から夢と希望と勇気をもらっている、ファッションチェックに忙しい中年のおっさんです。

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