岐阜新聞 映画部

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衝撃的だけど優しい絆が滲み出たファミリー映画

2019年09月06日

ガラスの城の約束

©2019 Lions Gate Entertainment Inc. All Rights Reserved.

【出演】ブリー・ラーソン、ウディ・ハレルソン、ナオミ・ワッツ、マックス・グリーンフィールド、セーラ・スヌーク、ジョシュ・カラス、ブリジット・ランディ=ペイン
【監督】デスティン・ダニエル・クレットン

なぜ、この親子関係が断絶するようなことがなかったのか。

 日本では、麒麟の田村裕さんが少年時代の極貧生活を笑いと涙で綴った「ホームレス中学生」以降、有名芸能人が自身の極貧時代を恥とすることなく、開けっぴろげに語る人が増えてきた。草を食って生きてきた風間トオルさんや、水かけご飯を考案した中居正広君など、ネタになってきている。

 本作は、アメリカのゴシップ系コラムニストでセレブと思われていたジャネット・ウォールズ(ブリー・ラーソン)が、ひた隠しにしてきた少女時代の極貧生活を回顧し、未だにボヘミアンな暮らしをしている両親に対する複雑な感情を描いた、衝撃的だけど優しい絆が滲み出たファミリー映画である。

 家族のために「ガラスの城」を作るという夢はあるものの、仕事は長続きせず酒浸りな父・レックス(ウディ・ハレルソン)と、絵ばかり描いていてほとんど家事をしない母・ローズマリー(ナオミ・ワッツ)。借金が増えてくると、オンボロ車に4人の子どもを乗せて、別の土地に逃げていく。何だか冒険ごっこを家族でやってるようで、それなりに楽しい。酒を呑んでいない父は明るくて物知りで悪気がないし、ネグレクト気味の母も、優しくていつもかばってくれる。

 しかし、子どもたちは成長するにつれ普通と違うんじゃないかと気が付き始め、両親が身勝手に思えてきて、家を飛び出すように独立していく。

 ここで私が思うのは、このウォールズ家の親子関係が、最近の日本でよくニュースになる「しつけ」という名目での児童虐待や、死ぬまで会わないという親子断絶に何故ならなかったのかという点である。それは、親が生き生きと夢を持っていた事、それを語り聞かせていた事、過干渉であったり支配的でなかった事かもしれない。また子どもたちの仲が良く、結束していて、相談できる関係があったからかもしれない。

 映画は、ラストにむけて回顧から懐古に変わってくる。今が辛くても、懐かしむ時がきっと来るのだと信じたい。

語り手:ドラゴン美多

中学三年の時に見た「日本沈没」「燃えよドラゴン」のあまりの面白さから映画の虜になって四十数年、今も映画から夢と希望と勇気をもらっている、ファッションチェックに忙しい中年のおっさんです。

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語り手:ドラゴン美多

中学三年の時に見た「日本沈没」「燃えよドラゴン」のあまりの面白から映画の虜になって四十数年、今も映画から夢と希望と勇気をもらっている、ファッションチェックに忙しい中年のおっさんです。

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