岐阜新聞 映画部

いま、どこかで出会える作品たち

Meet somewhere

二人の波瀾万丈な道行き

2019年07月28日

COLD WAR あの歌、2つの心

©OPUS FILM Sp. z o.o. / Apocalypso Pictures Cold War Limited / MK Productions / ARTE France Cinema / The British Film Institute / Channel Four Televison Corporation / Canal+ Poland / EC1 Lodz / Mazowiecki Instytut Kultury / Instytucja Filmowa Silesia Film / Kino Świat / Wojewodzki Dom Kultury w Rzeszowie

【出演】ヨアンナ・クーリク、トマシュ・コット、アガタ・クレシャ、ボリス・シィツ、ジャンヌ・バリバール、セドリック・カーン
【監督・脚本】パヴェウ・パヴリコフスキ

付かず離れず人生を交錯させてきた運命的出会いの末路

 監督パヴェウ・パヴリコフスキの前作『イーダ』(2013)の白黒画像があまりに美しく、いつまでも心に残ったので本作へも期待度が大きかったが、それを裏切らない出来栄え。映画的な技巧や野心度は前作に軍配が上がるが、本作では捉えどころのない女ごころや胸にしみわたる楽曲の使い方で、この監督の新境地を見せる。それぞれのエピソードごとに始めに字幕で年代と場所が示され、時系列的に物語が展開するので分かりにくさはない。ただし、一つ一つのシーンは短めで話の進み方は早い。

 映画の初めは10代の少女にしか見えないヒロインは映画の進行に連れ、小悪魔的ファム・ファタール(運命の女)に変身していく。その女の教師だった主人公の男は首尾よく戦後のポーランドから東ベルリン経由でパリに亡命するものの、帰国時に逮捕され収容所送りになる。そこに現れたのが、かつて愛した女という劇的な展開。1時間半の短い映画の中で二人の運命的出会いと別れが繰り返される。この監督の両親がモデルだそうだが、平凡な人生とは真逆の生き様だ。

 自由でわが道を行く女に振り回される主人公の男が哀れにも見えるが、成瀬巳喜男の『浮雲』の二人のように、付かず離れず人生を交錯させてきた運命的出会いの末路としかいいようのない物語だ。ウカシュ・ジャルの白黒スタンダードによるシャープな撮影も特筆に値する。

語り手:シネマトグラフ

外資系資産運用会社に勤務。古今東西の新旧名画を追いかけている。トリュフォー、リヴェット、ロメールなどのフランス映画が好み。日本映画では溝口と成瀬。タイムスリップして彼らの消失したフィルムを全て見たい。

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語り手:シネマトグラフ

外資系資産運用会社に勤務。古今東西の新旧名画を追いかけている。トリュフォー、リヴェット、ロメールなどのフランス映画が好み。日本映画では溝口と成瀬。タイムスリップして彼らの消失したフィルムを全て見たい。

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