岐阜新聞 映画部

いま、どこかで出会える作品たち

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嘘つきムッシューと車椅子マドモアゼルの大人のラブストーリー

2019年07月26日

パリ、嘘つきな恋

©2018 Gaumont / La Boetie Films / TF1 Films Production / Pour Toi Public

【出演】フランク・デュボスク、アレクサンドラ・ラミー
【監督・脚本】フランク・デュボスク

お洒落で小粋でエスプリが効いた、これぞフランス映画

 「歌を歌うにはイタリア語、詩を作るにはドイツ語、愛を語るにはフランス語」と言われる事がある。愛=アムールの国からやってきた、小粋でロマンティックなフレンチタッチのコメディ映画は、嘘つきムッシューと車椅子マドモアゼルの笑えて泣けて応援したくなってくる大人のラブストーリーだ。

 たまたま亡き母の車椅子に乗っていたプレイボーイのジョスラン(フランク・デュポスク)が、身体障害者と勘違いされて、車椅子のヴァイオリニスト・フロランス(アレクサンドラ・ラミー)を紹介される。快活で聡明な彼女の虜になってしまったジョスランは、「本当は健常者なんです」と言うきっかけを失ってしまい、そのまま身障者を装うことになる。その嘘から起こる立ったり座ったりのドタバタが最大の笑いどころだ。

 この「歩けないという身体障害の状況で笑わせる」と言うのは、ヘタをすると「障害者を笑いものにしている」と取られかねないが、主演も兼ねるフランク・デュポスク監督は、障害を特別視せず、見たなりの特徴として、例えばフロランスに「私のお尻は可愛いのに、誰にも見えないの」と言わせて笑わせる。障害をからかうのは差別だが、事実を笑い飛ばすのは価値観の尊重なのである。そこには障害者・健常者の区別はない。

 ジョスランはフロランスを障害者として見るのではなく、ひとりの女性として恋をする。50代にして初めて本当の恋をするのである。彼の自宅のプールでのファンタスティックなシーンは、気恥ずかしくなるほどの「ジュ・テーム」。フランス映画の真骨頂だ。

 パリが舞台であるが、有名な観光施設がほとんど出てこず、石畳の道や街路樹が美しい街並みの中で、小気味良くお話は進んでいく。観光映画になってない分、むしろ憧れのパリの匂いがしてくる。歩いてみたい街、暮らしてみたい街、キュートなパリだ。

 お洒落で小粋でエスプリが効いた、これぞフランス映画である。

語り手:ドラゴン美多

中学三年の時に見た「日本沈没」「燃えよドラゴン」のあまりの面白さから映画の虜になって四十数年、今も映画から夢と希望と勇気をもらっている、ファッションチェックに忙しい中年のおっさんです。

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語り手:ドラゴン美多

中学三年の時に見た「日本沈没」「燃えよドラゴン」のあまりの面白から映画の虜になって四十数年、今も映画から夢と希望と勇気をもらっている、ファッションチェックに忙しい中年のおっさんです。

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