フランク・デュボスクの才人ぶりに驚く

　ジョスラン（フランク・デュボスク）は名うてのプレイボーイ。旅帰りの空港でも女性からは目を離せない。パリでは大手のシューズメーカーの代理店長を務め、金には困らない優雅な独身生活を送っている。主治医で友人のマックスからも、節操のない女好きに釘を刺される。そんな時、離れて暮らす母親が亡くなったと知らせが入る。

　葬儀では兄からの嫌味を受け流すが、母親との思い出が詰まった実家では、センチメンタルに浸ってしまう。母の使っていた車椅子に座っていると、「手伝いましょうか？」と声をかけられる。そこにはグラマラスな美女ジュリーが立っていた。

　ジュリーからの憐憫に甘えるのもありかと、嘘つきの性分が出たジョスランは、車椅子生活の男を演じることにする。招待されたジュリーの実家でも、要領よく立ち振る舞っていたが、そこへジュリーの姉であるフロランス（アレクサンドラ・ラミー）を紹介される。彼女は車椅子に座っていた。

　ジョスランを演じるフランク・デュボスクは、日本ではまだ馴染みがないが、フランスでは人気のコメディアンで、ラジオ、テレビを中心に活躍している。本作では脚本、主演に加えて初の監督もこなしている。秘書と絡む寸劇っぽいやりとりはコントを思わせ、その片鱗がうかがえる。

　フロランスは事故で車椅子生活になってしまったが、バイオリン奏者として各地を飛び回り、合間には車椅子テニスプレイヤーとしても活躍していた。ジョスランはそんな真摯な姿に魅了され、恋心は次第に本気モードに突入していくが、はじめについてしまった嘘からはなかなか抜け出せない。

　登場するフランスのスポットや、演奏旅行へ押しかけて行くプラハの街並みなど、ロマンチックなビジュアルも満載で、特にプールのラブシーンにはうっとりする。細かいことにこだわらなければ、存分に楽しめるラブコメディだ。