岐阜新聞 映画部

いま、どこかで出会える作品たち

Meet somewhere

緻密に計算されたストーリーと、絶妙なタイミングでの仕掛けばらし

2019年07月23日

コンフィデンスマンJP

©2019「コンフィデンスマンJP」製作委員会

【出演】長澤まさみ、東出昌大、小手伸也、小日向文世、織田梨沙、瀧川英次、Michael Keida、前田敦子、佐津川愛美、岡田義徳、桜井ユキ、生瀬勝久、山口紗弥加、小池徹平、佐藤隆太、吉瀬美智子、石黒賢、竹内結子、三浦春馬、江口洋介
【監督】田中亮

意図的なミスリードも含めて、古沢ワールドに引きずり込んでいく

 気の弱い小市民である私であるが、映画は現実ではとてもできない事を私の代わりにやってくれるのだ。典型的なコンゲームである『コンフィデンスマンJP』は、私の密かな願いを叶えてくれて気持ちがいい。頭も顔もスタイルもよいが性格最悪な大金持ちの権力者が、欲に駆られて一気に没落する姿は愉快痛快である。

 仕掛ける側は、天才ダー子(長澤まさみ)、お人好しのボクちゃん(東出昌大)、変装名人リチャード(小日向文世)を中心としたチーム。はめられる側は、香港マフィアの女帝ラン・リウ(竹内結子)、恋愛詐欺師ジェシー(三浦春馬)、ゴッドファーザー赤星(江口洋介)たち。香港でのコンゲームはこの布陣でスタートだ。

 コンゲームの面白さは、劇中の悪い奴らをどんな仕掛けで引っ掛けていくのか、どんな思いもよらない結末が用意されているかを、二転三転するストーリー展開でスリリングに描いていく点にある。そして何よりも観ている観客をいかに上手に騙していって、その騙された事に心地よい痛快感を覚えさせるかでもある。

 本作も、ミステリーのルール(偶然や第六感、超自然能力を用いてはならない。読者・観客に提示していない手掛かりによって解決してはならない等)を準用しつつ、意図的なミスリードも含めて、観客を古沢ワールドに引きずり込んでいく。古沢とはテレビ版でもシナリオを書いていた古沢良太のことで、当代きってのストーリーテラーである。彼のシナリオは、映画版でも緻密に計算されたストーリーと、絶妙なタイミングでの仕掛けばらしで、最後の最後まで観客を翻弄していく。

 ただ、テレビからのファンを意識したのか、撮影時間に制約があったのか、画面は色味や濃淡が無くつるんとしていて単調。説明セリフも多くて行間が少なく、テレビのブローアップ版にしか見えないのは残念ではあるが、映画版だからといって無理せずいつも通りなのは潔いともいえる。悪くはない。

語り手:ドラゴン美多

中学三年の時に見た「日本沈没」「燃えよドラゴン」のあまりの面白さから映画の虜になって四十数年、今も映画から夢と希望と勇気をもらっている、ファッションチェックに忙しい中年のおっさんです。

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語り手:ドラゴン美多

中学三年の時に見た「日本沈没」「燃えよドラゴン」のあまりの面白から映画の虜になって四十数年、今も映画から夢と希望と勇気をもらっている、ファッションチェックに忙しい中年のおっさんです。

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