岐阜新聞 映画部

いま、どこかで出会える作品たち

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観て語りたくなる映画

2019年07月22日

空母いぶき

©かわぐちかいじ・惠谷治・小学館/『空母いぶき』フィルムパートナーズ

【出演】西島秀俊、佐々木蔵之介、本田翼、小倉久寛、髙嶋政宏、玉木宏、戸次重幸、市原隼人、堂珍嘉邦、片桐仁、和田正人、石田法嗣、平埜生成、土村芳、深川麻衣、山内圭哉、中井貴一、村上淳、吉田栄作、工藤俊作、金井勇太、中村育二、益岡徹、斉藤由貴、藤竜也、佐藤浩市
【監督】若松節朗

強烈なリアリティを感じた『シン・ゴジラ』に対して…

 防衛出動といえば、日本近郊に突如出現した巨大不明生物に対して、徹底したリアリズムで自衛隊が闘う姿を描き、某軍事ジャーナリストから「もはや怪獣映画ではない。これは国防映画である」と言わしめた『シン・ゴジラ』(2016年)が記憶に新しい。

 当時、石破元防衛相が、「ゴジラは国または国に準ずる組織ではないので、害獣駆除として災害派遣で対処すべき」と発言していたが、『空母いぶき』では「東亜連邦」という国から急迫不正の武力攻撃があり、他にとるべき手段がないとの前提なので防衛出動の条件は一応満たしている。

 しかし、なぜに私が、空想上の生物を描いた『シン・ゴジラ』に強烈なリアリティを感じ夢中になったのに、架空とはいえ可能性がゼロではない外国からの攻撃を描いた『空母いぶき』にはリアリティを全く感じず白けてしまったのか?

 まずは相対する敵にどれだけ真実味があるかである。『シン・ゴジラ』はその出現に様々な科学的根拠を与えており、だからこそ不気味なのだが、『空母いぶき』の敵はルソン島北東にあるという建国3年の急進的民族主義国家。地図のどこを見ても無いのに「あると思え」と言われても無理だし、できたばかりの小さな島嶼国家が空母機動艦隊を保有しているなんて、そんなはずがない。

 F-35Bステルス戦闘機をほとんどゲーム感覚ですぐ使っちゃうし、コックピット内の戦闘員は顔のアップばかりで、見せ方の工夫がなくチープさ丸出し。だいたい戦闘シーンの大半は、モニター画面上に映し出される一昔前のテレビゲームのような代物で、昭和ノスタルジーが漂っている。

 そもそも「いぶき」に民間人が2人乗船している事も意味不明だが、彼らが戦闘の様子をネット経由でどんどん送り出し、それで国民が騒ぎ出す。機密保持もあったもんじゃない。アホか!

 どう?観たくなってきたでしょ?そうです、逆に観て語りたくなる映画なのです。凄いですよ。

語り手:ドラゴン美多

中学三年の時に見た「日本沈没」「燃えよドラゴン」のあまりの面白さから映画の虜になって四十数年、今も映画から夢と希望と勇気をもらっている、ファッションチェックに忙しい中年のおっさんです。

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語り手:ドラゴン美多

中学三年の時に見た「日本沈没」「燃えよドラゴン」のあまりの面白から映画の虜になって四十数年、今も映画から夢と希望と勇気をもらっている、ファッションチェックに忙しい中年のおっさんです。

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