岐阜新聞 映画部

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監督自らが最も得意とするサスペンスの分野で勝負した群像劇

2019年07月21日

轢き逃げ 最高の最悪な日

©2019映画「轢き逃げ」製作委員会

【出演】中山麻聖、石田法嗣、小林涼子、毎熊克哉/水谷豊、檀ふみ、岸部一徳
【監督・脚本】水谷豊

スタッフ、役者、水谷豊の熱き心もいい。テーマの「嫉妬」もよく分かるが…

 若い頃は、反抗的で尖っていて口が達者な調子のいい若者を軽々と演じ、私の憧れの兄貴だった水谷豊。今ではすっかり改悛し、ループ止めサスペンダーの刑事役でお茶の間の人気者になっている。

 俳優として実績充分の彼が放った監督第二弾は、自らが最も得意とするフィールドであるサスペンスの分野で勝負した群像劇である。さらに、今回は彼自らが単独で書いた完全オリジナルシナリオであり、そんな御大の意欲作を失敗させてはなるものかと、撮影、照明、美術などの「相棒」スタッフ達が、その職人魂を存分に発揮しプロフェッショナルな仕事をしている。

 登場する俳優陣も水谷豊を盛り立てる。いつもはベテラン刑事役の彼だが、今回は被害者の父に回り、刑事役は岸部一徳と毎熊克哉にまかせている。ベテランの岸部とおとぼけの毎熊。「相棒」のコンビとは違ったキャラで犯人を追及していく様子は、2人の上手い演技もあってリアリティがあり、ちょっとしたくすぐり笑いもちゃんと笑える。

 そして、轢き逃げの加害者を演ずるのは、売り出し中の中山麻聖と石田法嗣を抜擢。ある程度観客を呼べるであろう東映映画で、若い俳優を育てようとする水谷豊の心遣いはたいしたものである。

 スタッフもいい、役者もいい、水谷豊の熱き心もいい。テーマの「嫉妬」もよく分かる。ほとんどいいのに何故か映画が腑に落ちないのだ。それはズバリ、プロットが杜撰すぎるからである。

 偶発的な要素に頼りすぎており、ご都合主義の度を越している。物語もアチコチ寄り道していき、テーマと無関係で意味不明なシーンが突如差し挟まれたりする。水谷豊の役は被害者の父で一般人なのにも関わらず、警察に代わって捜査を始めてしまう。

 気にならない人にはどうでもいい事だと思うが、私は気になって気になって仕方なかった。それなりに楽しめる映画なので惜しい。水谷さん、シナリオはプロに任せた方がよかったかも。

語り手:ドラゴン美多

中学三年の時に見た「日本沈没」「燃えよドラゴン」のあまりの面白さから映画の虜になって四十数年、今も映画から夢と希望と勇気をもらっている、ファッションチェックに忙しい中年のおっさんです。

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語り手:ドラゴン美多

中学三年の時に見た「日本沈没」「燃えよドラゴン」のあまりの面白から映画の虜になって四十数年、今も映画から夢と希望と勇気をもらっている、ファッションチェックに忙しい中年のおっさんです。

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