岐阜新聞 映画部

いま、どこかで出会える作品たち

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事件の裏に隠された罪と罰

2019年07月21日

轢き逃げ 最高の最悪な日

©2019映画「轢き逃げ」製作委員会

【出演】中山麻聖、石田法嗣、小林涼子、毎熊克哉/水谷豊、檀ふみ、岸部一徳
【監督・脚本】水谷豊

俳優・水谷豊の監督・脚本作品、その腕前やいかに…

 入り組んだ住宅街の道路を疾走する若者が見える。それを俯瞰の視点がとらえる。息も荒くただならぬ様子がうかがえる。辿り着いた場所には車が停まり、若者は慌てて乗り込む。申し訳なさそうに遅れたことを謝る輝(石田法嗣)。運転席の秀一(中山麻聖)は遅刻に悪態をつくが、急ぎ発進させる。ところが、まもなく渋滞にはまる。輝は抜け道となる順路を喫茶店スマイルの名前を出して提案する。空いた脇道を疾走する車は、ちょうどそのスマイルの前あたりで人をはねてしまう。大事を引き起こしてしまった焦りと逡巡のなか、秀一は倒れた女性を放置して、再びアクセルを踏む。

 たどり着いたホテルのエントランスに車を乗り捨て、ふたりが駆け込んだのはブライダルコーナーだった。テーブルには秀一の結婚相手の早苗がいる。翌々日に控えた結婚式の打ち合わせのための待ち合わせだったことが分かる。遅刻を引き起こした張本人の輝は、披露宴の司会をするという。最高な日を控えた最悪の日のはじまり。ここまでの導入で、いくつかの疑問点が浮かぶ。

 車がはねた女性の死亡を伝えるニュースが流れ、ふたりのもとに謎の脅迫文が届くなどして、罪の意識は次第に高まる。ところが、ふたりは独身最後の日を現実逃避のように過ごす。何となくちぐはぐな展開に見えるが…。

 結婚式の当日、視点は轢き逃げ事件を追う刑事に移る。唐突感とともに、物語のトーンも一変する。

 娘の事故死を受け入れることができないでいた時山(水谷豊)は、犯人の逮捕を知らせにきた刑事から、残された持ち物に携帯電話がないことを告げられる。知られざる娘の一面を紐解き、真実を求める父親の姿は理解できるが、些か乱暴な進行に疑問符は増殖していく。脚本の疵は致命的で、感動的になるはずのラストもしっくりこないのは、なんとも残念だ。

語り手:覗き見猫

映画にはまって40数年。近頃、めっきり視力が衰えてきましたが、字幕を追う集中力はまだまだ大丈夫です。好きなジャンルは? 人間ドラマ…面白くない半端な回答…甘い青春映画も大好きです。

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語り手:覗き見猫

映画にはまって40数年。近頃、めっきり視力が衰えてきましたが、字幕を追う集中力はまだまだ大丈夫です。好きなジャンルは? 人間ドラマ…面白くない半端な回答…甘い青春映画も大好きです。

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