岐阜新聞 映画部

いま、どこかで出会える作品たち

Meet somewhere

巨大な図書館の舞台裏にある真実

2019年07月16日

ニューヨーク公共図書館 エクス・リブリス

© 2017 EX LIBRIS Films LLC – All Rights Reserved

【監督・録音・編集・製作】フレデリック・ワイズマン

場を映像に記述する試み そこに見えてくるアメリカという国

 フレデリック・ワイズマンは1930年1月1日にボストンに生まれた。ロー・スクールを卒業して弁護士をするかたわら、大学で教鞭をとっていたが、67年にドキュメンタリーの映画作家に転身した。

 日本では90年代に紹介され始めたが、ドキュメンタリーという性格上、一般の劇場での上映ではなかった。すでにその頃には、究極のスタイルを獲得している映像作家として、高く評価されていた。

 ドキュメンタリーは真実=事実をそのまま映し出すことを基本とするが、そこに作り手の意志が入り込むことは必然で、メッセージ性が強く表面化することも少なくない。

 対象に対して深く関わること、例えば、生活をともにするなどして、同化する方法もある。また、対象が意図に反して、主張を前面に押し出し、時にカメラの存在が日常を逸脱破壊することもある。これをアクシデントとするか、隠されていた真実の吐露と見るか、その判断がドキュメンタリー作家としての手腕に委ねられる。

 ニューヨークにある公共図書館は巨大な建造物で、荘厳な雰囲気をたたえた美術館や博物館のように見える。本棚に並んだ書物とPCやタブレットが置かれた机上は、不釣り合いだがこれが現代であろう。図書館スタッフたちは、デジタル化による平等な情報提供を真剣に議論する。それはホームレスとの対峙法や教科書の内容にまで及ぶ。また、利用者の問い合わせに対応する職員をとらえる。マニュアルの壁は存在しても、時にアドバイスは、書物の頁を繰るように、コンシェルジュとして機能する。公共としての存在が、日本における図書館の概念を大きく超えていることに驚く。

 ワイズマンの映画には議論がよく登場する。そこにはナレーションや音楽による、説明や装飾はない。場を映像に記述する試み。それは一見狭小な視点でありながら、アメリカという国を見つめているように思えてくる。

語り手:覗き見猫

映画にはまって40数年。近頃、めっきり視力が衰えてきましたが、字幕を追う集中力はまだまだ大丈夫です。好きなジャンルは? 人間ドラマ…面白くない半端な回答…甘い青春映画も大好きです。

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語り手:覗き見猫

映画にはまって40数年。近頃、めっきり視力が衰えてきましたが、字幕を追う集中力はまだまだ大丈夫です。好きなジャンルは? 人間ドラマ…面白くない半端な回答…甘い青春映画も大好きです。

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