岐阜新聞 映画部

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侵略者は戦利品を欲す

2019年06月30日

ヒトラーVS.ピカソ 奪われた名画のゆくえ

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【出演】トニ・セルヴィッロ
【監督】クラウディオ・ポリ

欲望の犠牲となった美術品と芸術家たち

 ジョン・フランケンハイマー監督の『大列車作戦』(64)は、第二次大戦末期のフランスを舞台に、敗色濃厚なナチス・ドイツが、パリのジュ・ド・ポーム美術館から大量の美術品をドイツに運び出そうとする計画を阻止すべく、立ち上がったレジスタンスたちとナチスの攻防を描いたアクション・サスペンス映画。ゴーギャン、ルノワール、ゴッホ、マネ、ドガ、ミロ、セザンヌ、マチスなどの名画が登場し、退廃芸術として排除の対象の中心であったピカソもその中に含まれていた。

 近年では『ミケランジェロ・プロジェクト』が2015年に公開されている。これもナチスによる美術品略奪や破壊を阻止すべく、奪還を試みる連合軍の闘いが描かれている。

 いずれも戦争映画として区分されるだろうが、そこで描かれているのは、戦時下のナチスによる美術品絡みの史実である。ヒトラーが若き日に画家を志していたことも含め、映画は繰り返し題材としている。

 『ヒトラーVS.ピカソ 奪われた名画のゆくえ』は、この史実(美術史上の影の部分)にスポットを当てたドキュメンタリー映画である。

 芸術が政治に利用されるのは必然で、ナチスは映画や戦意高揚ポスターや建築にと、視覚効果のあるものに影響力を与えた。これを誇大妄想にかられた陳腐な芸術と評価するのは、いささか一方的過ぎる。レニ・リーフェンシュタール監督のベルリンオリンピック・ドキュメンタリー映画『民族の祭典 オリンピア第一部』『美の祭典 オリンピア第2部』の映像力や、宣伝ポスターにあるデザイン的な先駆性は、現在もその輝きを失うことはない。

 ヒトラーをはじめ、ナチス幹部たちの美術品への執着は、純粋な芸術的価値への欲求ではなく、単純に金欲であったことがなんとも情けない。そして、その裏で事実上主役となって君臨していた画商たちの存在が、実におぞましい。

語り手:覗き見猫

映画にはまって40数年。近頃、めっきり視力が衰えてきましたが、字幕を追う集中力はまだまだ大丈夫です。好きなジャンルは? 人間ドラマ…面白くない半端な回答…甘い青春映画も大好きです。

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語り手:覗き見猫

映画にはまって40数年。近頃、めっきり視力が衰えてきましたが、字幕を追う集中力はまだまだ大丈夫です。好きなジャンルは? 人間ドラマ…面白くない半端な回答…甘い青春映画も大好きです。

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