岐阜新聞 映画部

いま、どこかで出会える作品たち

Meet somewhere

夫婦、育児、労働の問題を提示し、自己を振り返る手助けをしてくれる

2019年06月15日

パパは奮闘中!

©2018 Iota Production / LFP – Les Films Pelléas / RTBF / Auvergne-Rhöne-Alpes Cinéma

【出演】ロマン・デュリス、レティシア・ドッシュ、ロール・カラミー、バジル・グランバーガー、レナ・ジェラルド・ボス、ルーシー・ドゥベイ
【監督・脚本】ギヨーム・セネズ

離婚経験者である監督は、オリヴィエもローラも責めない。

 仕事最優先で家事も育児も奥さんに任せっきり、文句を言ってこないので理解してくれていると勝手に思い込んでいる亭主に対し、妻の溜まっていたマグマが噴出して、離婚を切り出したり、逃げてしまう映画は古今東西枚挙にいとまがない。

 本作も、突然奥さんに逃げられてしまったオリヴィエ(ロマン・デュリス)の仕事に加えて、家事と子育てで奮闘する姿を描いているが、彼をよくある会社一筋の仕事人間として一面的に捉えてはいない。

 彼が勤めるオンラインショッピングの倉庫では、コストカットにより暖房が切られ、従業員は次々と契約解除させられている。利益追求のみのブラック企業の中で労働組合の幹部としても責任を持つ彼は、仲間たちの権利を守るため朝から晩まで忙しく駆け回っている。誠実で献身的で一生懸命。こんな俺のどこが悪いの?なんで出て行っちゃうの?

 一方、仕事と家事と育児をこなしてきた妻のローラ(ルーシー・ドゥベイ)は、勤めていたアパレルショップで客に同情し、自らも泣き出して気を失ってしまう。もうこのままでは自分が壊れてしまう。悪いのは分かっているけど、すべてから解放させて!

 離婚経験者であるギヨーム・セネズ監督は、オリヴィエもローラも責めはしない。オリヴィエに「もっと家庭を顧みろ」と言ってるわけではないし、ローラを「子どもを置き去りにしてひどい母親だ」と責めているわけでもない。夫婦問題、育児問題、労働問題を具体的に提示し、我々観客に示すことによって、それぞれが想像し、自己を振り返る手助けをしているのだ。

 夫婦間でも、相方の本当の気持ちは分からないことが多い。ことが起こってから初めて気が付くこともある。映画の素晴らしさは、そういったことを、はたと気が付かせてくれるところである。

 『パパは奮闘中!』は、頑張ってるけど何故か報われないお父さんたちに、「嫁の気持ち」も考えてねという励まし映画である。

語り手:ドラゴン美多

中学三年の時に見た「日本沈没」「燃えよドラゴン」のあまりの面白さから映画の虜になって四十数年、今も映画から夢と希望と勇気をもらっている、ファッションチェックに忙しい中年のおっさんです。

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語り手:ドラゴン美多

中学三年の時に見た「日本沈没」「燃えよドラゴン」のあまりの面白から映画の虜になって四十数年、今も映画から夢と希望と勇気をもらっている、ファッションチェックに忙しい中年のおっさんです。

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