岐阜新聞 映画部

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未だ現役監督で主役もはってブイブイ言わせてるなんて、嬉しさ極まれり

2019年06月03日

運び屋

©2018 VILLAGE ROADSHOW FILMS (BVI) LIMITED, WARNER BROS. ENTERTAINMENT INC. AND RATPAC-DUNE ENTERTAINMENT LLC

【出演】クリント・イーストウッド、ブラッドリー・クーパー、ローレンス・フィッシュバーン、マイケル・ペーニャ、ダイアン・ウィースト、アリソン・イーストウッド、タイッサ・ファーミガ
【監督・制作】クリント・イーストウッド

『グラン・トリノ』でもう監督作の主演は終わりと言っていたが、引退はなかった。

 私が中3の時、初めて映画館で観た洋画は『燃えよドラゴン』だが、併映は『ダーティハリー』だった。ブルース・リーとクリント・イーストウッドによって引きずり込まれた、めくるめくような映画の世界。今もその魅惑の世界にどっぷり浸っているが、そのイーストウッドが未だ現役で、90歳の麻薬の運び屋の映画の監督はおろか、主役もはってブイブイ言わせてるなんて、嬉しさ極まれりである。

 老境に入ってからのイーストウッド主演映画は、「仕事一筋で家庭を顧みなかった時代遅れの頑固じいさんが、最後の一花咲かせて退場していく」というまるで自分自身の生き写しのような映画が多かったが、本作では実の娘(アリソン・イーストウッド)を自身が演じた伝説の運び屋アールの娘に起用するなど、益々「今まで好き勝手やってて悪かった。許してくれ。」感が強く出ている。

 顔には深い年輪がいっぱい刻まれ足元もおぼつかない老人だが、90歳でワルの片棒を担ぐことになる。しかし、アールには末端価格が数百万ドルになるような麻薬を運んでいる緊張感は微塵もなく、アリゾナからデトロイトまで、かつてイーストウッドが活躍したアメリカ大陸を縦断しながら、鼻歌交じりに運んでいく。監視役のギャングなどほとんど無視。道中、好き勝手な行動をとって彼らをはらはらさせる。

 全体はシリアスでなくユーモアあふれるコメディータッチとなっていて、イーストウッドは煮ても焼いても食えない爺を飄々と演じている。見た目は年寄りでも、逆にそれを利用して90歳で新しいビジネスに挑戦する(犯罪ではあるが)なんて、人間いくつになっても「もうこれで終わり」はないのだと教えてくれる。

イーストウッドは『グラン・トリノ』でもう監督作の主演は終わりと言っていたが、この爺さんに引退はなかった。人生の達人として、将来を諦めかけた人たちへのメッセージと己自身の贖罪のため、映画を作り続けていってほしい。

語り手:ドラゴン美多

中学三年の時に見た「日本沈没」「燃えよドラゴン」のあまりの面白さから映画の虜になって四十数年、今も映画から夢と希望と勇気をもらっている、ファッションチェックに忙しい中年のおっさんです。

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語り手:ドラゴン美多

中学三年の時に見た「日本沈没」「燃えよドラゴン」のあまりの面白から映画の虜になって四十数年、今も映画から夢と希望と勇気をもらっている、ファッションチェックに忙しい中年のおっさんです。

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