岐阜新聞映画部映画館で見つけた作品希望の灯り B! 働く人の孤独と尊厳を鮮やかに描いた傑作 2019年05月18日 希望の灯り © 2018 Sommerhaus Filmproduktion GmbH 【出演】フランツ・ロゴフスキ、ザンドラ・ヒュラー、ペーター・クルト、アンドレアス・レオポルト、ミヒャエル・シュペヒト、ラモナ・クンツェ=リブノウ 【監督・脚本】トーマス・ステューバー 穏やかな絆で結ばれた人々の細やかな日常 巨大なスーパーマーケットの異様に高く林立する商品棚は、機能と効率によって造られた要塞に見える。その谷間のような通路をフォークリフトが行く。そこに流れるのは「美しき青きドナウ」だが、優雅なワルツと無機質な風景がどことなくアンバランスに映る。この冒頭のシークエンスが映画『希望の灯り』の微妙な色合いを予告する。 腕や首にタトゥーを入れたクリスティアン(フランツ・ロゴフスキ)が新入社員として雇われる。配属されるのは飲料部門で、その責任者のブルーノ(ペーター・クルト)は無愛想な男だが、不器用な新米のクリスティアンには丁寧、適確に仕事の手順を教える。 お菓子部門のマリオン(サンドラ・ヒュラー)には、売り場の通路や商品棚にできた隙間越しに度々出会い、クリスティアンには気になる存在になっていたが、休憩所での会話をきっかけに次第に親密になっていく。 舞台となる場所は、旧東ドイツの街ライプツィヒで、広い駐車場の向こうにはアウトバーンを行き交う車が見える。ブルーノはトラックの運転手だった過去と、スーパーで働く同僚の多くはその頃からの仲間であることを話す。 クリスマスの夜、閉店後のスーパーの片隅で、ささやかなパーティーが開かれる。同僚たちが交わすたわいない会話や、ちょっとしたいたずらとふざけあい。暖かい絆で結ばれた職場を切り取った印象的なシーンだ。 監督のトーマス・ステューバーは1981年、映画の舞台であるライプツィヒに生まれた。原作のクレメンス・マイヤーも東ドイツ出身の作家。夜のスーパーの駐車場の虚無的な広がりは、ドイツ統合によってできてしまったであろう社会の歪みを孤独として映しだす。しかし、映画は人々のつながりに“希望の灯り”を提示する。優しいぬくもりに包まれた気持ちに誘う物語は、心に沁みる静かな傑作となった。 語り手:覗き見猫映画にはまって40数年。近頃、めっきり視力が衰えてきましたが、字幕を追う集中力はまだまだ大丈夫です。好きなジャンルは? 人間ドラマ…面白くない半端な回答…甘い青春映画も大好きです。 100% 観たい! (9)検討する (0) 語り手:覗き見猫映画にはまって40数年。近頃、めっきり視力が衰えてきましたが、字幕を追う集中力はまだまだ大丈夫です。好きなジャンルは? 人間ドラマ…面白くない半端な回答…甘い青春映画も大好きです。 2024年03月27日 / COUNT ME IN 魂のリズム ドラムを主役にした音楽ドキュメンタリー 2024年03月27日 / COUNT ME IN 魂のリズム 全編ドラム愛に満ち溢れた、身体で感じられる音楽映画 2024年03月26日 / 瞳をとじて 時と記憶をたどる哀しくとも美しい物語 more 2021年05月26日 / 【思い出の映画館】銚子セントラル(千葉県) ドラマ『港町純情シネマ』の舞台となった映画館 2020年08月19日 / 大心劇場(高知県) 高知の山奥にポツンと佇む懐かしの映画館 2018年01月11日 / リナシアター(鹿児島県) 大隅半島にただひとつ…皆の思いで復活した映画館 more
穏やかな絆で結ばれた人々の細やかな日常
巨大なスーパーマーケットの異様に高く林立する商品棚は、機能と効率によって造られた要塞に見える。その谷間のような通路をフォークリフトが行く。そこに流れるのは「美しき青きドナウ」だが、優雅なワルツと無機質な風景がどことなくアンバランスに映る。この冒頭のシークエンスが映画『希望の灯り』の微妙な色合いを予告する。
腕や首にタトゥーを入れたクリスティアン(フランツ・ロゴフスキ)が新入社員として雇われる。配属されるのは飲料部門で、その責任者のブルーノ(ペーター・クルト)は無愛想な男だが、不器用な新米のクリスティアンには丁寧、適確に仕事の手順を教える。
お菓子部門のマリオン(サンドラ・ヒュラー)には、売り場の通路や商品棚にできた隙間越しに度々出会い、クリスティアンには気になる存在になっていたが、休憩所での会話をきっかけに次第に親密になっていく。
舞台となる場所は、旧東ドイツの街ライプツィヒで、広い駐車場の向こうにはアウトバーンを行き交う車が見える。ブルーノはトラックの運転手だった過去と、スーパーで働く同僚の多くはその頃からの仲間であることを話す。
クリスマスの夜、閉店後のスーパーの片隅で、ささやかなパーティーが開かれる。同僚たちが交わすたわいない会話や、ちょっとしたいたずらとふざけあい。暖かい絆で結ばれた職場を切り取った印象的なシーンだ。
監督のトーマス・ステューバーは1981年、映画の舞台であるライプツィヒに生まれた。原作のクレメンス・マイヤーも東ドイツ出身の作家。夜のスーパーの駐車場の虚無的な広がりは、ドイツ統合によってできてしまったであろう社会の歪みを孤独として映しだす。しかし、映画は人々のつながりに“希望の灯り”を提示する。優しいぬくもりに包まれた気持ちに誘う物語は、心に沁みる静かな傑作となった。
語り手:覗き見猫
映画にはまって40数年。近頃、めっきり視力が衰えてきましたが、字幕を追う集中力はまだまだ大丈夫です。好きなジャンルは? 人間ドラマ…面白くない半端な回答…甘い青春映画も大好きです。
語り手:覗き見猫
映画にはまって40数年。近頃、めっきり視力が衰えてきましたが、字幕を追う集中力はまだまだ大丈夫です。好きなジャンルは? 人間ドラマ…面白くない半端な回答…甘い青春映画も大好きです。