岐阜新聞 映画部

いま、どこかで出会える作品たち

Meet somewhere

知られざる戦争の苦労や苦しみ、悲しみがよく分かる作品

2019年05月17日

あの日のオルガン

©2018「あの日のオルガン」製作委員会

【出演】戸田恵梨香、大原櫻子、佐久間由衣、三浦透子、堀田真由、福地桃子、白石糸、奥村佳恵、林家正蔵、夏川結衣、田中直樹、橋爪功
【監督・脚本】平松恵美子

平松恵美子監督の手堅い演出が映画に品を持たせている

 太平洋戦争末期、米軍による本土空襲が始まる中、東京・大阪・名古屋などの大都市の学童を中心に「学童疎開」という名で安全地域への集団避難が実施された。防空の足手まといになるのを防ぐのと、将来の兵力の温存のためという建前ではあったが、子どもたちの命を救うという一面もあったのは間違いない。

 本作は集団疎開の対象外だった保育園児たちを集団で地方に疎開させ、何とか保育を続けようと奮闘した保母さんと園児たちの実話で、奇をてらうことなくじっくりと描きこんでいく。戦争とは関係なく日常を続けようと尽力する前半と、東京大空襲により抗うことのできない現実を受け止めざるを得ない後半。1つ1つのエピソードを丁寧に積み重ねていく平松恵美子監督の手堅い演出は、映画に品を持たせている。

 「怒りの乙女」とあだ名されるリーダーの楓先生(戸田恵梨香)の怒りの矛先は、園児たちが文化的な環境で豊かな感性を育んでいくのを顧みない時代そのものであり、拒んでいる大人たちだ。

 彼女の強いリーダーシップの元、保母たちは疎開保育の内容はもちろん、親とのやりとり、食料の調達、おねしょの対策など、保育以外の様々な問題に対して「健康な身体とほどほどの脳みそ」で日々あたっていく。

 そんな中でも、天真爛漫で失敗ばかりの新米保母・光枝(大原櫻子)の数少ない特技はオルガンを弾く事。「雀の学校」や「お猿のかごや」などをみんなで歌うところは名作『二十四の瞳』(木下惠介監督)を思い出させる。ひもじくとも文化的でありたいと願う心温まるシーンだ。

 しかし、彼女たちが必死に守ろうとした疎開保育も、「消費班」だといって迷惑がる地元民や、激しくなる空襲により家族を失った園児、理不尽で軍国的な男社会などによって翻弄され、苦悩はどんどん深まっていく。

 戦争には現代の私たちが知らなかった苦労や苦しみ、悲しみがまだまだあるのだという事がよく分かる映画である。

語り手:ドラゴン美多

中学三年の時に見た「日本沈没」「燃えよドラゴン」のあまりの面白さから映画の虜になって四十数年、今も映画から夢と希望と勇気をもらっている、ファッションチェックに忙しい中年のおっさんです。

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語り手:ドラゴン美多

中学三年の時に見た「日本沈没」「燃えよドラゴン」のあまりの面白から映画の虜になって四十数年、今も映画から夢と希望と勇気をもらっている、ファッションチェックに忙しい中年のおっさんです。

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