岐阜新聞 映画部映画館で見つけた作品グリーンブック B! 優れた脚本と主演ふたりの名演が生んだ傑作 2019年05月19日 グリーンブック © 2018 UNIVERSAL STUDIOS AND STORYTELLER DISTRIBUTION CO., LLC. All Rights Reserved. 【出演】ヴィゴ・モーテンセン、マハーシャラ・アリ、リンダ・カーデリーニ 【監督】ピーター・ファレリー 「良い脚本と最適なキャスティングこそが映画の成功の鍵」を体現 良い脚本と最適なキャスティングこそが映画の成功の鍵と言ったのは、『アパートの鍵貸します』などの名監督ビリー・ワイルダーだったか。 アカデミー賞作品賞を受賞した『グリーンブック』は、まさに優れた脚本と、主演のヴィゴ・モーテンセンとマハーシャラ・アリの名演が生んだ傑作である。 映画の評価は、その作品に込められたメッセージも大切ではあるが、それ以上に作品そのものの魅力によって評価されるべきだと思っている。是枝裕和監督の『万引き家族』や、ケン・ローチ監督の『わたしは、ダニエル・ブレイク』は、弱者に不寛容な社会への異議申し立てのメッセージも素晴らしいが、作品そのものに絶大な魅力があった。作品そのものの魅力が、メッセージをより説得力のあるものにしていると言い換えてもいい。この『グリーンブック』も、分断化の進むアメリカ社会へのメッセージを込めた、一級品のエンタテインメント作品である。 『グリーンブック』は、黒人と白人が差別を超えて理解しあう過程を描いたロードムービーで、『手錠のままの脱獄』や『夜の大捜査線』などの名作を思い起こさせる内容だが、それらと比較しても、ふたりが徐々に心を通い合わせるエピソードの数々は秀逸だ。監督が『メリーに首ったけ』などのファレリー兄弟の兄ピーター・ファレリーなので、ユーモアの匙加減も絶妙である。 そして何より主役のふたりのキャラクターが素晴らしい。観客の多くはふたりに好感を抱き、彼らと旅する時間が長く続いて欲しいとさえ思うのではないか。マハーシャラ・アリのアカデミー賞助演男優賞受賞は文句なしだが、できればキャリア最高の演技を見せてくれたヴィゴ・モーテンセンにも主演男優賞を受賞してもらいたかった。 映画は幕切れが肝心だ。ラストシーンの出来栄えで印象がガラッと変わってしまう。近年では、デイミアン・チャゼル監督の『セッション』と『ラ・ラ・ランド』のラストシーンが素晴らしかった。この「グリーンブック」の幕切れもそれに匹敵する出来栄えであった。 語り手:井上 章映画鑑賞歴44年。出来る限り映画館で観ることをモットーとし、日本映画も外国映画も、新作も旧作も、ジャンルを問わず観てきたおかげか、2006年に、最初の映画検定1級の試験に最高点で合格しました。 100% 観たい! (6)検討する (0) 語り手:井上 章映画鑑賞歴44年。出来る限り映画館で観ることをモットーとし、日本映画も外国映画も、新作も旧作も、ジャンルを問わず観てきたおかげか、2006年に、最初の映画検定1級の試験に最高点で合格しました。 2021年02月26日 / 天空の結婚式 ゲイカップルの結婚騒動記 2021年02月24日 / 天空の結婚式 恋愛に異性も同性も関係ない!歌って踊って大ハッピーエンド 2021年02月22日 / どん底作家の人生に幸あれ! ちょっと変化球気味なディケンズ原作の成長物語 more 2020年12月09日 / 第七藝術劇場(大阪府) ディープな街、十三にある個性派ミニシアター 2019年10月16日 / シネマ・ジャック&ベティ(神奈川県) 戦後からハマの映画ファンを唸らせ続けた双子の映画館 2020年10月14日 / シネマスコーレ(愛知県) 若松孝二監督が遺した学校という名の小さな映画館 more
「良い脚本と最適なキャスティングこそが映画の成功の鍵」を体現
良い脚本と最適なキャスティングこそが映画の成功の鍵と言ったのは、『アパートの鍵貸します』などの名監督ビリー・ワイルダーだったか。
アカデミー賞作品賞を受賞した『グリーンブック』は、まさに優れた脚本と、主演のヴィゴ・モーテンセンとマハーシャラ・アリの名演が生んだ傑作である。
映画の評価は、その作品に込められたメッセージも大切ではあるが、それ以上に作品そのものの魅力によって評価されるべきだと思っている。是枝裕和監督の『万引き家族』や、ケン・ローチ監督の『わたしは、ダニエル・ブレイク』は、弱者に不寛容な社会への異議申し立てのメッセージも素晴らしいが、作品そのものに絶大な魅力があった。作品そのものの魅力が、メッセージをより説得力のあるものにしていると言い換えてもいい。この『グリーンブック』も、分断化の進むアメリカ社会へのメッセージを込めた、一級品のエンタテインメント作品である。
『グリーンブック』は、黒人と白人が差別を超えて理解しあう過程を描いたロードムービーで、『手錠のままの脱獄』や『夜の大捜査線』などの名作を思い起こさせる内容だが、それらと比較しても、ふたりが徐々に心を通い合わせるエピソードの数々は秀逸だ。監督が『メリーに首ったけ』などのファレリー兄弟の兄ピーター・ファレリーなので、ユーモアの匙加減も絶妙である。
そして何より主役のふたりのキャラクターが素晴らしい。観客の多くはふたりに好感を抱き、彼らと旅する時間が長く続いて欲しいとさえ思うのではないか。マハーシャラ・アリのアカデミー賞助演男優賞受賞は文句なしだが、できればキャリア最高の演技を見せてくれたヴィゴ・モーテンセンにも主演男優賞を受賞してもらいたかった。
映画は幕切れが肝心だ。ラストシーンの出来栄えで印象がガラッと変わってしまう。近年では、デイミアン・チャゼル監督の『セッション』と『ラ・ラ・ランド』のラストシーンが素晴らしかった。この「グリーンブック」の幕切れもそれに匹敵する出来栄えであった。
語り手:井上 章
映画鑑賞歴44年。出来る限り映画館で観ることをモットーとし、日本映画も外国映画も、新作も旧作も、ジャンルを問わず観てきたおかげか、2006年に、最初の映画検定1級の試験に最高点で合格しました。
語り手:井上 章
映画鑑賞歴44年。出来る限り映画館で観ることをモットーとし、日本映画も外国映画も、新作も旧作も、ジャンルを問わず観てきたおかげか、2006年に、最初の映画検定1級の試験に最高点で合格しました。