岐阜新聞 映画部

いま、どこかで出会える作品たち

Meet somewhere

簡単な“運び屋”の仕事には毒があった

2019年06月03日

運び屋

©2018 VILLAGE ROADSHOW FILMS (BVI) LIMITED, WARNER BROS. ENTERTAINMENT INC. AND RATPAC-DUNE ENTERTAINMENT LLC

【出演】クリント・イーストウッド、ブラッドリー・クーパー、ローレンス・フィッシュバーン、 マイケル・ペーニャ、ダイアン・ウィースト、アリソン・イーストウッド、タイッサ・ファーミガ
【監督・製作】クリント・イーストウッド

家族への贖罪が心にしみる好編

 90歳になろうとするアール(クリント・イーストウッド)は、“デイリリー”を専門に栽培する小さな農園を経営している。羽振りがいいとは言えないが、移民の男を何人か雇い、花の愛好者団体が主催するコンクールでは表彰されたりもしている。しかし、経営難から農場は差し押さえとなってしまう。

 押収から逃れたガラクタを、ピックアップトラックの荷台に積み込み、向かったのは疎遠になっている家族のもとだったが、返ってくるのは激しい拒否反応だった。特に、娘アイリスからは近寄ることも許されない。言い訳の効かない父親不在が、自業自得のように降りかかるのだった。その家族の集まりで、アールは見知らぬ男に声をかけられ、金になる仕事口を斡旋される。

 イーストウッドは1930年生まれ、5月31日で89歳の誕生日を迎えたが、毎年のように新作を発表し続ける映画づくりへの情熱は、衰えを知らない。今作では『グラン・トリノ』(08)でコンビを組んだニック・シェンクの脚本を得て、それ以来の監督と主演を兼ねた。そしてこの2作には、いくつかの共通点が見られるのが興味深い。

 アールは連絡先に出向く。そこには胡散臭い連中がいて、威嚇してくるのだが、アルは飄々とやり過ごす。仕事は荷物を送り届けるというか簡単なものだったが、絶対に中身を見るなと警告を受ける。

 1回目の仕事は何事もなくあっけなく完了するが、ダッシュボードに入っていた多額の報酬に、少なからず心騒ぎを覚える。しかし、誘惑は“運び屋”の仕事に深入りさせる。

 仕事を仕切っているのがメキシコ人であることが、最近騒がれている“壁”のことを想起させる。『グラン・トリノ』にはベトナムの少数民族が登場した。アールは黒人に対して平気で“ニグロ”と口走る。そこに悪気や政治色はない。“デイリリー”の花言葉は「苦しみからの解放」である…家族への贖罪が痛々しく心に沁みる。

語り手:覗き見猫

映画にはまって40数年。近頃、めっきり視力が衰えてきましたが、字幕を追う集中力はまだまだ大丈夫です。好きなジャンルは? 人間ドラマ…面白くない半端な回答…甘い青春映画も大好きです。

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語り手:覗き見猫

映画にはまって40数年。近頃、めっきり視力が衰えてきましたが、字幕を追う集中力はまだまだ大丈夫です。好きなジャンルは? 人間ドラマ…面白くない半端な回答…甘い青春映画も大好きです。

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