岐阜新聞 映画部

いま、どこかで出会える作品たち

Meet somewhere

珍道中で笑わせながら、人種差別の愚かさを分かりやすく描く

2019年04月27日

グリーンブック

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【出演】ヴィゴ・モーテンセン、マハーシャラ・アリ、リンダ・カーデリーニ
【監督】ピーター・ファレリー

井上ひさしの名言が届いたからこその大ヒット

 無知で粗野な主人公とインテリで上品な相棒によるバディムービーは古今東西無数にあるが、水と油のような役柄分担で黒人の方がインテリという設定は、今までほとんど無かったと思う。

 おバカなコメディ映画が得意なピーター・ファレリー監督が真面目寄りに作った本作は、黒人差別が激しかった1962年のアメリカ南部を舞台に、黒人の天才ピアニスト・シャーリー(マハーシャラ・アリ)とイタリア系白人の用心棒トニー(ヴィゴ・モーテンセン)の珍道中で観客を笑わせながら、人種差別の愚かさを誰にでも分かりやすく描いた万人向けの娯楽作である。

 私の敬愛する小説家・井上ひさしの名言に「難しいことを易しく、易しいことを深く、深いことを面白く。」というのがある。本作が思いがけずアカデミー賞作品賞を受賞したばっかりに、「今も残る深刻な黒人差別の実態から目を背けている、口当たりがいいだけの作品」などとのバッシングが一部で出ているが、確かに黒人と白人が次第に理解し合い、お互いをリスペクトしていくというストーリーは甘っちょろいかもしれない。

 しかし、この作品が井上ひさしの名言の通りの内容と語り口で、多くの人に「人種差別はダメだな。助け合って生きていくのって気持ちいいな。」と届いたからこそ、大ヒットしているのだと思う。

 私もストーリー運びのあまりの上手さに、観た直後はかえってもの足りなさを感じたが、時間が経つほど映画の中の心地よい人間関係がジワリと脳髄を刺激してきて、これでいいではないかとの思いが強くなってきた。

 「日本は黒人差別がない」などと呑気な事を言っている人もいるが、たまたま近くにいなかっただけであり、ご存知の通り日本にも激しい人種差別をする人たちがいる。この映画のレイティングがG(年齢を問わない)というのが重要で、子どもを含めた家族で楽しめて、社会勉強もできて「差別はいけないね」と学べる、優れものの映画である。

語り手:ドラゴン美多

中学三年の時に見た「日本沈没」「燃えよドラゴン」のあまりの面白さから映画の虜になって四十数年、今も映画から夢と希望と勇気をもらっている、ファッションチェックに忙しい中年のおっさんです。

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語り手:ドラゴン美多

中学三年の時に見た「日本沈没」「燃えよドラゴン」のあまりの面白から映画の虜になって四十数年、今も映画から夢と希望と勇気をもらっている、ファッションチェックに忙しい中年のおっさんです。

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