岐阜新聞 映画部

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愛憎渦巻く駆け引きと、力関係の変遷を描いた「大奥」物語

2019年04月22日

女王陛下のお気に入り

©2018 Twentieth Century Fox Film Corporation

【出演】オリヴィア・コールマン、エマ・ストーン、レイチェル・ワイズ、ニコラス・ホルト、ジョー・アルウィン
【監督】ヨルゴス・ランティモス

3人の女優の丁々発止の演技合戦が見所

 イギリスでは「女王の時代は栄える」と言われている。スペイン無敵艦隊を破ったエリザベス一世や大英帝国を築いたヴィクトリア女王、93歳にして現役のエリザベス二世などは誰もが知る偉大な女王だ。

 そんな中、18世紀初頭、世界史的にみればステュアート朝最後の女王で、大ブリテン王国を成立させたアン女王(オリヴィア・コールマン)と、側近として仕え実質的に権力を握っていたサラ(レイチェル・ワイズ)、野心に燃える召使のアビゲイル(エマ・ストーン)の愛憎渦巻く駆け引きと、力関係の変遷を描いたのが本作である。

 イギリスでは13世紀から議会制度が始まっていたが、アン女王が在位していた時代は、17世紀終盤の名誉革命により「君臨すれども統治せず」という立憲君主制が確立していく過程にあった。映画の中でも、女王の仕事は議会対応が主となっている。

 そういった背景の中で、アン女王のお気に入りの座を巡ってサラとアビゲイルが女の闘いを繰り広げる。アン女王の歓心を引き、寂しさを紛らわせるためには性的関係まで厭わないところまで踏み込んで描いているが、実は女王の一番のお気に入りは、ことごとく亡くしてしまった子どもの代わりのウサギだったりする。

 この映画でウサギの存在は重要であり、ウサギをウサギとしか呼ばないサラに対して、ウサギに対する女王の愛を理解したアビゲイルの地位が段々逆転してくる。しかし、ラストシーンでウサギを踏みつけるアビゲイルを見て本心を知り、「私は女王、指図するな」と言い放つのもウサギがきっかけである。

 戦争や増税で民が苦しんでいるのに、宮廷内ではとんだ愛憎劇が展開していたり、貴族はパーティやゲームに勤しんでいる様子が滑稽に描かれているが、舞踏会で踊っているダンスがディスコ風であったりして、現代とのつながりを目くばせしているところが面白い。

 3人の女優の丁々発止の演技合戦が見所の「大奥」物語である。

語り手:ドラゴン美多

中学三年の時に見た「日本沈没」「燃えよドラゴン」のあまりの面白さから映画の虜になって四十数年、今も映画から夢と希望と勇気をもらっている、ファッションチェックに忙しい中年のおっさんです。

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語り手:ドラゴン美多

中学三年の時に見た「日本沈没」「燃えよドラゴン」のあまりの面白から映画の虜になって四十数年、今も映画から夢と希望と勇気をもらっている、ファッションチェックに忙しい中年のおっさんです。

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