岐阜新聞 映画部

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劇中で取り上げられる本に隠された監督のリスペクトとは?

2019年04月20日

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©2017 Green Films AIE, Diagonal Televisio SLU, A Contracorriente Films SL, Zephyr Films The Bookshop Ltd.

【出演】エミリー・モーティマー、ビル・ナイ、パトリシア・クラークソン
【監督・脚本】イザベル・コイシェ

ヒントは「華氏451度」

 イギリスでは、大手広告代理店がバックアップして「本屋で本を買おう」というキャンペーンが実施されているらしい。これは、岐阜新聞映画部の「映画館で観ないなんてもったいない」とコンセプトは似ているが、元々読書家が多いイギリスでも電子書籍やネット書店の普及で、日本と同じように街の本屋が次々と消えている現状から始まったということだ。

 本作は、まだ本屋が地方の文化の担い手だった1959年、イギリスの小さな海辺の町で読書好きのフローレンス(エミリー・モーティマー)が、亡き夫との夢だった書店を開こうとする所から物語は始まる。

 わたし的には、イギリスはトラディショナルと呼ばれる伝統的なファッションなどで保守的なイメージがあるが、この映画の時代のイギリスも実に保守的である。

 街の有力者ガマート夫人(パトリシア・クラークソン)に睨まれたらさあ大変。ありとあらゆる妨害を仕掛けてくる。彼女には「よそ者を受け入れて、文化の発信基地になってもらおう」などという発想は微塵もなく、あるのは自分以外に成功する女性など認められない嫉妬と、自らの権威を確認したい自己顕示欲だけである。人間の発展にとって、嫉妬や妬み・ひがみという感情が如何に邪魔をしているのか、この映画を観ているとよく分かる。

 書店を舞台にした映画なので、劇中で取り上げられる本のタイトルは当然ながらキーとなってくる。中でも、後に映画化され和製英語「ロリコン」の元となったナバコフ著「ロリータ」を巡る顛末は面白いが、最初の客で引きこもりの老人ブランディッシュに勧めたブラッドベリ著「華氏451度」は特に興味深い。書物を読む事を禁じられた近未来を描いた内容で、後にフランソワ・トリュフォーが監督して映画化した。その映画の主役ジュリー・クリスティが本作のナレーターを務めているのは、イザベル・コイシェ監督からのリスペクトに違いない。読書家にお勧めの映画である。

語り手:ドラゴン美多

中学三年の時に見た「日本沈没」「燃えよドラゴン」のあまりの面白さから映画の虜になって四十数年、今も映画から夢と希望と勇気をもらっている、ファッションチェックに忙しい中年のおっさんです。

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語り手:ドラゴン美多

中学三年の時に見た「日本沈没」「燃えよドラゴン」のあまりの面白から映画の虜になって四十数年、今も映画から夢と希望と勇気をもらっている、ファッションチェックに忙しい中年のおっさんです。

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