岐阜新聞 映画部

いま、どこかで出会える作品たち

Meet somewhere

家族の味をめぐる自分探しの物語

2019年04月19日

家族のレシピ

©Zhao Wei Films/Wild Orange Artists

【出演】斎藤工、マーク・リー、ジネット・アウ、伊原剛志、別所哲也、ビートリス・チャン、松田聖子
【監督】エリック・クー

シンガポールと日本を結ぶ極上の肉骨茶

 群馬県高崎市でラーメン店を経営する和男(伊原剛志)は寡黙な職人気質だが、その味は確かで店は繁盛している。厨房には弟の明男(別所哲也)とひとり息子の真人(斎藤工)がいた。和男は店が終われば、近くの飲み屋でひとり晩酌をし、家に帰れば寝床にも入らずにごろ寝をする。真人ともろくな会話は交わさない。何が彼を“石のような”頑なな男にしたのか?

 朝、和男は倒れ、あっけなく亡くなる。葬儀を済ませた真人は、父の遺品の中に日記と写真と手紙を発見する。それは、真人が10歳の時に亡くなった母メイリアン(ジネット・アウ)の遺したものだった。

 『家族のレシピ』は、真人の父と母が出会った場所であり、母の生まれの地シンガポールでの、失われた家族探しの物語である。

 まず、そのヒントとなるのが“肉骨茶(バクテー)”の味で、幼い頃のかすかな記憶と、その味を守る伯父の店に手がかりを求める。その手助けをするのが、フードブロガーの美樹(松田聖子)で、真人とはネット上のつながりだったが、その熱意を受け止めて、伯父の肉骨茶屋を見つけてくれる。

 和男はシンガポールの日本料理店で板前をしていた。ふたりの出会いは、メイリアンの実家が営む肉骨茶屋に和男が客として行ったことに始まる。遺された写真でたどる、ふたりが愛を育んだ日々。その障害となったのは、メイリアンの母だった。母と娘の確執は次第に明らかになる。そこには、癒えることのない戦争の傷があった。

 残念なのは、母の思いがあまりに直情的で、娘の幸せを願う感情に向かわないこと。そして、和男が頑なになった理由がいまひとつ鮮明に見えてこないことだ。

 もどかしい感情のもつれを解いてくれるのは、家族の味=肉骨茶だった。はじまりのラーメンから、シンガポール料理の数々は、空腹時には堪えるのでご用心。

語り手:覗き見猫

映画にはまって40数年。近頃、めっきり視力が衰えてきましたが、字幕を追う集中力はまだまだ大丈夫です。好きなジャンルは? 人間ドラマ…面白くない半端な回答…甘い青春映画も大好きです。

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語り手:覗き見猫

映画にはまって40数年。近頃、めっきり視力が衰えてきましたが、字幕を追う集中力はまだまだ大丈夫です。好きなジャンルは? 人間ドラマ…面白くない半端な回答…甘い青春映画も大好きです。

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