岐阜新聞 映画部

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金髪の野獣ハイドリヒの生い立ちと、暗殺に至るまでを描く

2019年04月11日

ナチス第三の男

©Photo by Bruno Calvo All rights reserved

【出演】ジェイソン・クラーク、ロザムンド・パイク、ジャック・オコンネル、ジャック・レイナー、ミア・ワシコウスカ
【監督】セドリック・ヒメネス

監督の祈りが込められた映画

 現代の映画の中での悪役中の悪役はヒトラーである。その彼をとりまく極悪人として登場するヒムラーやアイヒマン、ゲッペルスなどの悪役スターたち。中でも最悪の鬼畜でホロコーストの実行責任者であり、秘密警察と諜報部のボスであった金髪の野獣ハイドリヒ。その彼の生い立ちと、ナチス高官で唯一暗殺されるに至った最期を描いたのが本作である。

 海軍軍人だったハイドリヒ(ジェイソン・クラーク)は、淫らな女性関係から不名誉除隊となるものの、貴族階級出身の妻リナ(ロザムンド・パイク)の助言によりナチス党員となり、巧みにヒムラーに取り入っていく。セドリック・ヒメネス監督は、ハイドリヒがHHhH(ヒムラーの頭脳)との異名をとるほどにヒムラーの信用を勝ち取り、逆にヒムラーを操っていく様子を丁寧に描いていく。

 驚くべきは彼がヒトラーの信奉者でなく、後から打算的にナチスに入った事である。平時であればおそらく平凡な一生を送ったであろう彼が、狂気の時代だからこそその非道ぶりを高く買われ、汚い仕事を一手に引き受け幹部に上り詰めていったのである。

 対するはチェコ人でレジスタンス闘士のヤンとヨゼフの青年二人。イギリスへ亡命していた彼らは、パラシュートで母国チェコへ潜入し暗殺の機会を伺う。

 映画は暴虐を宿しユダヤ人を含む反対勢力を駆逐していくハイドリヒ一味と、国難を打開しようとするチェコのレジスタンスとの熾烈を極める闘いを、リアリティ溢れる映像で描いていく。

 ナチスドイツが崩壊するのは1945年。ハイドリヒ暗殺の実行は1942年。暗殺は成功するものの戦争もユダヤ人狩りも終わることなく、ますます激しくなっていく。暗殺に関わった関係者は次々と非業の死を遂げていく。

 本作はネオナチが跋扈し始めた現代の風潮に対し、斯様な人物が出現することを警告し、気が付けば戦争や他人種迫害とならぬよう、監督の祈りを込めて作られた映画である。

語り手:ドラゴン美多

中学三年の時に見た「日本沈没」「燃えよドラゴン」のあまりの面白さから映画の虜になって四十数年、今も映画から夢と希望と勇気をもらっている、ファッションチェックに忙しい中年のおっさんです。

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語り手:ドラゴン美多

中学三年の時に見た「日本沈没」「燃えよドラゴン」のあまりの面白から映画の虜になって四十数年、今も映画から夢と希望と勇気をもらっている、ファッションチェックに忙しい中年のおっさんです。

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