岐阜新聞 映画部

いま、どこかで出会える作品たち

Meet somewhere

人間の幸せの本質を分かりやすく描いた北海道ご当地ムービー

2019年04月07日

そらのレストラン

© 2018「そらのレストラン」製作委員会

【出演】大泉洋、本上まなみ、岡田将生、マキタスポーツ、高橋努、石崎ひゅーい、眞島秀和、安藤玉恵、庄野凛、鈴井貴之、風吹ジュン、小日向文世
【監督・脚本】深川栄洋

「買ってみたい・行ってみたい・住んでみたい」と思える発信力

 この映画の舞台はせたな町だが、鉄ちゃん的には国鉄瀬棚線の終着駅「瀬棚」の方がしっくりくる。ご当地映画が成功するには、地元の人が観て楽しめる事はもちろん、それ以外の人たちにも「この映画のロケ地に行ってみたいな」と思わせる魅力が無ければならない。

 本作は「ぼくらは地方で幸せを見つける」とか「持続可能な循環型農業」など、新自由主義時代の過酷な競争社会からは距離を置いた、人間の幸せの本質って何?という命題を分かりやすく描いた北海道ご当地ムービーである。

 映画を観ていると、みんないい人ばかりで意地悪な人は誰もいないし、ふりかかる問題は(上映時間中の)10分以内に次々解決するし、独り者の亘理(大泉洋)のところに「北海道の海の見える牧場」の雑誌の切り抜きを握りしめた女性(本上まなみ)が突然「ここで働かせて下さい」とやってきても、「人は雇ってないけど、僕のお嫁さんになれば居られるよ」と、これ以上ない歯が浮くようなキザなセリフは言うし、いささか鼻白む場面も多いが、私が好きなジャンルの映画であり、それらを突っ込みながら楽しむことができる。

 東京でエリートサラリーマンだった神戸(岡田将生)が、牧場で牛の世話をしながら土と空気とヒトに触れ合ううちに、人間性を取り戻すなどは綺麗ごとかもしれないが、この映画を観た誰か1人にでも「こういう生き方もあるんだな」と心に届き、気持ちが軽くなるのであれば、映画の出来がどうのこうのなど、関係ないのである。

 大規模農業とは一線を画した有機農業や自然農法などのこだわりの生産方法が、札幌のシェフをはじめ安全な農作物を求める人たちと結びつき、いただきますが幸せに通じていく。農業は辛い事だらけだとは思うが、みんな明るく楽しく助け合い、分かち合いながらやっているのが素敵だ。

 「買ってみたい・行ってみたい・住んでみたい」と思えてくる、発信力のある映画である。

語り手:ドラゴン美多

中学三年の時に見た「日本沈没」「燃えよドラゴン」のあまりの面白さから映画の虜になって四十数年、今も映画から夢と希望と勇気をもらっている、ファッションチェックに忙しい中年のおっさんです。

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語り手:ドラゴン美多

中学三年の時に見た「日本沈没」「燃えよドラゴン」のあまりの面白から映画の虜になって四十数年、今も映画から夢と希望と勇気をもらっている、ファッションチェックに忙しい中年のおっさんです。

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