岐阜新聞 映画部

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華やかな式典 その秘密の舞台裏

2019年03月23日

天才作家の妻 40年目の真実

© META FILM LONDON LIMITED 2017

【出演】グレン・クローズ、ジョナサン・プライス、クリスチャン・スレーター、マックス・アイアンズ、ハリー・ロイド、アニー・スターク
【監督】ビョルン・ルンゲ

生徒から女へ そして妻に そして母に

 ノーベル賞の発表を心待ちにしている人がいる。日本では近年、物理学、化学、生理・医学の部門で受賞が続き、なにかと身近に感じられるようになっている。一方、文学賞では数年前から村上春樹が候補に挙がり、発表当日はインターネットの生中継を見ながら、期待に胸躍らせる彼のファンが酒場に集う様子がニュースになったりする。賞に縁はないので当時者意識では分からないが、どんな賞であっても名誉を無下に嫌う人は少ないのではないか?

 キャッスルマン夫妻はその報せをベッドの上で受ける。現代文学の巨匠と言われるジョゼフ(ジョナサン・プライス)と、妻のジョーン(グレン・クローズ)も、ノーベル文学賞受賞を手を取り合い跳びはねて、その喜びを表現するのだった。

 お祝いのパーティーではジョゼフの作品は絶賛され、ジョーンの内助の功も決してないがしろにされることはなかった。ジョーンが気にかけているのは、作家として踏みだしたばかりの息子のこと。良好とは言えない父と子の関係だった。

 授賞式が行われるストックホルムへ向かう機内、記者のナサニエル(クリスチャン・スレーター)がふたりに近づいてくる。彼は完璧な“妻”に狙いを定めていた。

 物語はジョゼフとジョーンの若き日の出会いにさかのぼる。新進気鋭の作家に教えを請う師弟のような関係は、創作の過程で次第に深まっていく。この回想と授賞式の準備を絡めた展開は、ひとつのヒントが微妙に過去と繋がり、絡んだ糸を解くという構成で、心理サスペンスとして見応えがある。

 グレン・クローズは、83年に公開された映画デビュー作『ガープの世界』(ジョージ・ロイ・ヒル監督)での母親役が印象深く、今も記憶に新しい。むきだしの母性を息子ガープにぶつける母親。ジョーンの夫への愛も、案外、母性なのかもしれない。

語り手:覗き見猫

映画にはまって40数年。近頃、めっきり視力が衰えてきましたが、字幕を追う集中力はまだまだ大丈夫です。好きなジャンルは? 人間ドラマ…面白くない半端な回答…甘い青春映画も大好きです。

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語り手:覗き見猫

映画にはまって40数年。近頃、めっきり視力が衰えてきましたが、字幕を追う集中力はまだまだ大丈夫です。好きなジャンルは? 人間ドラマ…面白くない半端な回答…甘い青春映画も大好きです。

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