岐阜新聞 映画部

いま、どこかで出会える作品たち

Meet somewhere

超常現象より恐ろしい人の心を描く傑作ホラー

2019年02月17日

来る

©2018「来る」製作委員会

【出演】岡田准一、黒木華、小松菜奈、青木崇高、柴田理恵、太賀、志田愛珠、蜷川みほ、伊集院光、石田えり、松たか子、妻夫木聡
【監督】中島哲也

謎は謎のままでいいのではないでしょうか

 中島哲也監督の『来る』は和製『哭声 コクソン』とも言えるオカルト・ホラー映画の傑作です。

 妻夫木聡から黒木華を経て岡田准一へとリレーされるストーリーは、人間の身勝手な嫌な部分をこれでもかと言わんばかりに暴き立てた、どす黒さに圧倒されます。不可思議な超常現象より、人間の心の闇にゾッとさせられる映画です。

 妻夫木聡は人間の二面性を見事に演じ、黒木華はおとなしい主婦が壊れていく様を好演。そして、岡田准一もこれまでに演じた役とは全く違うキャラクターを演じて新鮮。脇では、腕利きの霊媒師を演じる柴田理恵の存在感が印象的です。

 『エクソシスト』『シャイニング』など、ホラー映画の傑作群からの影響を隠すことなく、むしろそれらを凝縮したようなスペクタクル演出は、怖さを超えて爽快感さえ感じさせてくれます。壮大なクライマックスは、中島哲也監督のビジュアル・センスが十二分に発揮された見せ場と言えるでしょう。

 この作品は最後まで謎(やって来るものの正体)を解明してくれません。しかし、ミステリー映画ではなくホラー映画なので、謎は謎のままでいいのではないでしょうか。本当の恐怖は得体が知れないものであり、謎だからこそ恐ろしいのだから。人間の心の奥のように。

語り手:井上 章

映画鑑賞歴44年。出来る限り映画館で観ることをモットーとし、日本映画も外国映画も、新作も旧作も、ジャンルを問わず観てきたおかげか、2006年に、最初の映画検定1級の試験に最高点で合格しました。

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語り手:井上 章

映画鑑賞歴44年。出来る限り映画館で観ることをモットーとし、日本映画も外国映画も、新作も旧作も、ジャンルを問わず観てきたおかげか、2006年に、最初の映画検定1級の試験に最高点で合格しました。

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