岐阜新聞 映画部

いま、どこかで出会える作品たち

Meet somewhere

強いメッセージが込められた塚本時代劇

2019年02月09日

斬、

© SHINYA TSUKAMOTO/KAIJYU THEATER

【出演】池松壮亮、蒼井優、中村達也、前田隆成、塚本晋也
【監督・脚本・撮影・編集・製作】塚本晋也

エロチックで美しい壁越しの求愛

 塚本晋也監督作品との出会いは、89年に公開された『鉄男』がはじまり。デフォメルされた映像と神経質なカット割り、不協和音を交えた音の効果が、異様なまでの威圧感でスクリーンから溢れ出そうになる。それは体験に近い出会いだった。その後も、『鉄男ⅡBODY HAMMER』(92)『東京フィスト』(95)『バレット・バレイ』(00)『六月の蛇』(03)『ヴィタール』(04)『HAZE』(06)『鉄男 THE BULLET MAN』(10)『KOTOKO』(12)とコンスタントに作品を発表し、海外でも高い評価を受けた。そして、前作にあたる『野火』(15)の衝撃は、今も記憶に新しい。

 『野火』は第二次大戦末期、日本の敗戦が濃厚になった頃のフィリピン戦線を舞台にした、大岡昇平の同名小説の映画化で、59年の市川崑版のリメイクとなる。戦場という極限状態に置かれた兵士たちの姿は、常に兵士個人の目線で語られる。なぜ戦うのか?なぜそこにいるのか?という自問が、哲学的にまで昇華される…凄い反戦映画だった。

 『斬、』はこの『野火』とテーマで連環し、強いメッセージが込められている。紅く爛れた金属塊、大鎚が振り下ろされ、火花とともに金属音が炸裂する。武器が生まれる刀鍛冶の現場。

 山間の農村、田んぼの草取りに精を出す百姓たち。そこに若い浪人風情の都築杢之進(池松壮亮)がいる。村の女ゆう(蒼井優)とは互いに意識し合う関係か?そして、ゆうの弟との剣術の稽古がはじまる。草原や林野を駆け巡る疾走感あふれるはじまり。そこに剣術の達人・澤村(塚本晋也)が現れ、動乱の京へ登るため、江戸への出立を杢之進に促す。

 エロチックで瑞々しい前半から、杢之進の内面葛藤に没入する後半とは、違和感すら感じ、いささか戸惑う。ラストの澤村の殉死に美学が見えるのは深読みか?塚本監督のブレない姿勢には心底敬服する。

語り手:覗き見猫

映画にはまって40数年。近頃、めっきり視力が衰えてきましたが、字幕を追う集中力はまだまだ大丈夫です。好きなジャンルは? 人間ドラマ…面白くない半端な回答…甘い青春映画も大好きです。

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語り手:覗き見猫

映画にはまって40数年。近頃、めっきり視力が衰えてきましたが、字幕を追う集中力はまだまだ大丈夫です。好きなジャンルは? 人間ドラマ…面白くない半端な回答…甘い青春映画も大好きです。

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