岐阜新聞 映画部

いま、どこかで出会える作品たち

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生と死と対峙する現場で働く理学療法士への応援映画

2019年02月08日

©映画「栞」製作委員会

【出演】三浦貴大、阿部進之介、白石聖、池端レイナ、福本清三、鶴見辰吾
【監督】榊原有佑

元理学療法士の榊原監督が圧倒的なリアリティで描く

 リハビリテーション専門職である理学療法士の姿を、元理学療法士の榊原有佑監督が、経験者ならではの圧倒的リアリティで描いた真実の物語である。真摯で誠実な主人公・雅哉(三浦貴大)が、悩み葛藤し挫折し、ぎりぎりの中から成長していく姿は、「僕に何ができるのか?」とのこの映画の問題提起を、観客にも深く考えさせる事になる。

 雅哉は目の前に立ちはだかる難問に対して、勇猛果敢に突破していくタイプではない。むしろ、真正面に患者に寄り添っていこうと思うあまり、問題を消化しきれずに一人で抱え込んでしまって自滅してしまうタイプである。患者の苦しみに対して共有して共感するのはいいけれど、いつしか助けてあげようとか治してあげようなどと、思い上がった上から目線になってしまう。それが受け入れられないと、いっぺんに自信を無くしていく。

 榊原監督は、いつも熱く患者に接する雅哉に対し冷水を浴びせる役回りとして、目の細い嫌味な感じの永田(前原滉)を配置する。彼の意見はいつもドライで、映画的には嫌われる役回りであるが、実は本質をついているのではと思わせる。この辺りの描き方は、監督の現役当時の考え方・感じ方が反映しているような気がする。

 映画は末期がんの自分の父親(鶴見辰吾)、脊髄損傷の元ラグビー選手(阿部進之介)、難病の海音くんの話を中心に進んでいく。医者よりも看護師よりも、患者と接する時間の長い理学療法士。立場としては、病気を治すのでなく回復を支える人。患者のココロの支えになる人。しかし、本当に支えになっているのか自問自答を繰り返す仕事でもある。

 この映画を観ていて分かってくるのは、障害者が障害を受容するのは簡単ではないという事、自分が支えられるのはわずかである事、でもそのわずかが患者の支えになるかもしれないという事である。

 生と死と対峙する現場で働く理学療法士の活躍とやりがいを描く、彼らへの応援映画である。

語り手:ドラゴン美多

中学三年の時に見た「日本沈没」「燃えよドラゴン」のあまりの面白さから映画の虜になって四十数年、今も映画から夢と希望と勇気をもらっている、ファッションチェックに忙しい中年のおっさんです。

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語り手:ドラゴン美多

中学三年の時に見た「日本沈没」「燃えよドラゴン」のあまりの面白から映画の虜になって四十数年、今も映画から夢と希望と勇気をもらっている、ファッションチェックに忙しい中年のおっさんです。

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