岐阜新聞 映画部

いま、どこかで出会える作品たち

Meet somewhere

88歳終活のロードムービー

2019年02月04日

家(うち)へ帰ろう

©2016 HERNÁNDEZ y FERNÁNDEZ Producciones cinematograficas S.L., TORNASOL FILMS, S.A RESCATE PRODUCCIONES A.I.E., ZAMPA AUDIOVISUAL, S.L., HADDOCK FILMS, PATAGONIK FILM GROUP S.A.

【出演】ミゲル・アンヘラ・ソラ、アンヘラ・モリーナ、オルガ・ポラズ、ユリア・ベアホルト、マルティン・ピロヤンスキー
【監督・脚本】パブロ・ソラルス

約束を果たすために向う家=故郷

 アブラハム(ミゲル・アンヘラ・ソラ)は88歳。身の回りを整理する終活のため、家には子や孫が集まっている。良い年寄りを演じてはいるが、性根には生意気な孫娘とやりあう気概も残している。夜明け前、アブラハムは家族には秘密にしていた目的のための行動に移る。

 タクシーで横付けした飾り気のない建物の怪しげな扉の中は、別世界のようなユダヤ人コミュニティだった。アブラハムはそこで、最後の旅のすべての手配を受ける。

 まず、アルゼンチン・ブエノスアイレスからスペイン・マドリッドへ飛行機の旅。隣り合わせた青年を煙にまく狡猾ぶりで笑わせるが、空港で足止めされる窮地を救ってやる優しさも見せる。

 マドリッドのホテルではぶっきらぼうな女主人と意気投合するが、ホテル荒らしの災難に遭い、仲違いしている末娘を頼るはめになる。

 アブラハムが目指すのは生まれ故郷のポーランド。しかし、“ポーランド”と“ドイツ”という言葉を口にはしない。その理由には、過酷なホロコーストの体験による痛みがあった。

 パリに到着したアブラハムは、ドイツを経由しないでポーランドへ行きたいと駅の案内人を手こずらせる。意固地な老人の態度は奇行にすら見えるが、それを救うのはドイツ人の文化人類学者の女性だった。

 『家(うち)へ帰ろう』はロードムービーの縦軸とともに、アブラハムの過去という横軸が明らかになることで、物語は重厚さを増す。

 監督のパブロ・ソラルスはアルゼンチンで生まれ育っているが、祖父はポーランド出身で、6歳の時に移住してきたという。この映画は自らのルーツを辿る旅でもある。

 アブラハムは痛めている自らの足に“ツーレス”と呼びかける。これはユダヤの言葉イディッシュ語で“プロブレム=問題”という意味がある。問題を許容する潔さが見える。

語り手:覗き見猫

映画にはまって40数年。近頃、めっきり視力が衰えてきましたが、字幕を追う集中力はまだまだ大丈夫です。好きなジャンルは? 人間ドラマ…面白くない半端な回答…甘い青春映画も大好きです。

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語り手:覗き見猫

映画にはまって40数年。近頃、めっきり視力が衰えてきましたが、字幕を追う集中力はまだまだ大丈夫です。好きなジャンルは? 人間ドラマ…面白くない半端な回答…甘い青春映画も大好きです。

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