岐阜新聞 映画部

いま、どこかで出会える作品たち

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社会主義の崩壊に翻弄されるふたりの男

2019年01月13日

セルジオ&セルゲイ 宇宙からハロー!

©2017 MEDIAPRO - RTV Commercial - ICAIC

【出演】トマス・カオ、ヘクター・ノア、ロン・パールマン
【監督・脚本】エルネスト・ダラナス・セラーノ

キューバと宇宙を繋ぐのは無線機

 1992年のキューバ。前年に起きたベルリンの壁崩壊の波は、次々と社会主義国家を襲い、遂には本家のソビエト連邦にも達した。キューバでも深刻な経済危機に見舞われ、人々の生活を圧迫していた。大学教授を務めるセルジオ(トマス・カオ)は、モスクワで学んだマルクス主義で教鞭をふるっていたが、一人娘と母親の食費にまで事欠く有様に、その自信も揺らぎ始めていた。唯一の趣味のアマチュア無線で交信できるニューヨーク在住のピーター(ロン・パールマン)からの情報が頼りだった。

 ソビエトの激動に翻弄されているもうひとりは、国際宇宙ステーション“ミール”に単独滞在中のセルゲイ(ヘクター・ノア)だった。母国の政変で帰還の延期を告げられた彼の孤独を紛らしてくれるのも無線だったが、応えてくれる相手はいない。

 映画はこのセルジオとセルゲイの不思議な友情を描く。ふたりはそれぞれに孤独を抱えている。セルジオはマルクス主義の幻想が崩れ去ることを目の当たりにして、信じてきたものへの希望も自信も無くしている。セルゲイは政府という後ろ盾が無くなったことを実感できないまま、宇宙ステーションのトラブルの修理に追われ、このまま忘れ去られる恐怖に襲われる。

 アメリカから送られた最新の無線機がふたりを繋ぐのだが、その儚げな接点が、資本主義と社会主義の関係性にも似ていて面白い。

 家の屋上で亡命用の密造船を作り、家のキッチンでは密造酒を蒸溜する。社会主義の破綻なんてお構いなしの、キューバの生活者の生きるたくましさも描かれる。セルゲイが政府機関からおかしな嫌疑をかけられる無線機に絡んだ、サブストーリーをポップなコメディ演出にしたのは、キューバ人監督エルネスト・ダラナス・セラーノの、深刻へ堕ちない希望への模索なのだろう。

語り手:覗き見猫

映画にはまって40数年。近頃、めっきり視力が衰えてきましたが、字幕を追う集中力はまだまだ大丈夫です。好きなジャンルは? 人間ドラマ…面白くない半端な回答…甘い青春映画も大好きです。

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語り手:覗き見猫

映画にはまって40数年。近頃、めっきり視力が衰えてきましたが、字幕を追う集中力はまだまだ大丈夫です。好きなジャンルは? 人間ドラマ…面白くない半端な回答…甘い青春映画も大好きです。

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