岐阜新聞 映画部

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脳死と心臓死を巡る問題に切り込んだ社会派娯楽映画

2019年01月14日

人魚の眠る家

©2018「人魚の眠る家」製作委員会

【出演】篠原涼子、西島秀俊、坂口健太郎、川栄李奈、山口紗弥加、田中哲司、田中泯、松坂慶子
【監督】堤幸彦

植物状態と脳死の違いをもっと明確に描けば…

 日本では、2010年に施行された改正臓器移植法により、本人の書面による意思表示に加え、意思不明の場合でも家族の承諾により提供ができる事となり、15歳未満の脳死臓器提供が可能となった。しかし世界では、臓器提供者数が人口100万人あたり34.8人のスペインを筆頭に主要国では軒並み10人以上となる中で、日本は0.9人と極めて低い数字となっている(2012年)。

 2015年に発売されベストセラーとなった東野圭吾の「人魚の眠る家」を、稀代のエンタテイメント監督・堤幸彦が映画化した本作は、脳死と心臓死を巡る深くて重い問題に果敢に切り込んだ社会派娯楽映画となった。ただ、脳死の当事者である6歳の瑞穂の母・薫子(篠原涼子)にあえて極端で奇怪な行動をとらせたり、脳死に至る要因を子どもに言わせるなど、いささか鼻白む部分もある事は確かだ。

 人間の死とは何か?IT企業経営者の和昌(西島秀俊)と薫子の仮面夫婦は、当初は勢いに押されるまま臓器移植に同意するが、娘の手がかすかに動くのを見て拒否に転ずる。ここでは医者が家族の翻意に関し、そのまま受け入れる姿勢を描いており、医療に対する敬意を感ずる。願わくば、心臓も動き温もりもある見た目は同じ状態の植物状態と脳死の違いをもっと明確に描けば、私のように腑に落ちない人間には、脳死の意味がもっと理解できたであろう。

 和昌の部下・星野(坂口健太郎)が、最先端の技術を使って脳死状態の瑞穂の身体を動かすようになる。で、ここらあたりからは悪乗り感が顕著に出てきて、私には社会派映画からフランケンシュタインを想像させるホラー映画に変わったとしか思えない展開に見えてくる。脳死と心臓死を巡る議論が、心臓死派が圧倒的不利な状況にしか見えないが、描き方としてはどうなんだろうか?

 いくつかの謎と疑問は残るが、狂気に満ちた母の愛を描いたのだとすれば、とても面白い映画である。

語り手:ドラゴン美多

中学三年の時に見た「日本沈没」「燃えよドラゴン」のあまりの面白さから映画の虜になって四十数年、今も映画から夢と希望と勇気をもらっている、ファッションチェックに忙しい中年のおっさんです。

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語り手:ドラゴン美多

中学三年の時に見た「日本沈没」「燃えよドラゴン」のあまりの面白から映画の虜になって四十数年、今も映画から夢と希望と勇気をもらっている、ファッションチェックに忙しい中年のおっさんです。

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