岐阜新聞 映画部

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最大の植民地インドの分離独立をイギリス側から見た厳しくかつ哀しい歴史劇

2018年12月14日

英国総督 最後の家

© PATHE PRODUCTIONS LIMITED, RELIANCE BIG ENTERTAINMENT(US) INC., BRITISH BROADCASTING CORPORATION, THE BRITISH FILM INSTITUTE AND BEND IT FILMS LIMITED, 2016

【出演】ヒュー・ボネヴィル、ジリアン・アンダーソン、マニーシュ・ダヤール、フマー・クレイシー、マイケル・ガンボン
【監督・脚本】グリンダ・チャ―ダ

ラストシーンは監督から祖父母へのプレゼント!?

 「太陽の沈まない国」といわれた大英帝国が、第二次大戦によるイギリスの経済的疲弊と民族主義による独立運動の高まりにより、植民地からの撤退を余儀なくされていた1947年。最大の植民地であったインドが、大量の血と多くの犠牲を払いながら、インドとパキスタンの2か国に分かれて独立していった過程を描いた、イギリス側から見た厳しくかつ哀しい歴史劇である。

 たった70数年前の出来事の歴史的評価はなかなか難しいが、本作は、最後の総督マウントバッテン卿(ヒュー・ボネヴィル)とその妻エドウィナ(ジリアン・アンダーソン)、邸宅で働く恋人同士のジート(マニーシュ・ダヤール)とアーリア(フマー・クレイシー)の4人を中心に、分離・独立に至る過程を「総督の家」で何が起こったかに絞ることによって、切り口を明確にし、シンプルに分かり易くしている。

 独立後、統一インドを望むネルーやガンディーに対し、分離を主張するジンナー。ヒンドゥー教徒とイスラム教徒の対立は決定的となり、マウントバッテン卿の決断は歴史的決定となってくる。卿の苦悩はリアルに伝わってくるが、そもそもこの宗教対立を煽り立て、植民地政策に利用してきたのはイギリスであり、この部分に対する踏み込みが若干弱いのは少しばかり残念であるが、イギリス視線だとはっきりしているので仕方がない。

 政治的思惑による強引な国境の線引きは、信ずる宗教により民族大移動をもたらし、混乱に拍車がかかる。そのため、ヒンドゥー教徒のジートとイスラム教徒のアーリアの恋の行く先は、ロミオとジュリエットの如く悲劇的展開を生じていく。イギリスの帝国主義(多民族を侵略し支配する政策)は、独立に際しても悲劇をもたらすのである。

 この時のトラウマを抱え、簡単に祖国へ戻れなかったグリンダ・チャーダ監督の祖父母。対立を乗り越えた感動のラストシーンは、祖父母へのプレゼントとなっているかのようだ。

語り手:ドラゴン美多

中学三年の時に見た「日本沈没」「燃えよドラゴン」のあまりの面白さから映画の虜になって四十数年、今も映画から夢と希望と勇気をもらっている、ファッションチェックに忙しい中年のおっさんです。

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語り手:ドラゴン美多

中学三年の時に見た「日本沈没」「燃えよドラゴン」のあまりの面白から映画の虜になって四十数年、今も映画から夢と希望と勇気をもらっている、ファッションチェックに忙しい中年のおっさんです。

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