岐阜新聞 映画部

いま、どこかで出会える作品たち

Meet somewhere

犯罪、青春…すべてを合わせ持った社会派娯楽映画

2018年11月24日

バッド・ジーニアス 危険な天才たち

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【出演】チュティモン・ジョンジャルーンスックジン、チャーノン・サンティナトーンクン、イッサヤー・ホースワン、ティーラドン・スパパンピンヨー
【監督】ナタウット・プーンピリヤ

厳しい監視や数多くの制約など、緊張感がみなぎる見事なエンタテインメント

 奇想天外な発想と独創的アイデアで、カンニングをビジネス化した天才女子高生・リンの計算され尽くした自信と倫理観による葛藤を中心に、張りつめた緊張感の中での駆け引きを描いたクライムムービーの快作である。

 と同時に、親の立場やその経済的条件、自らの試験の成績でしか認められない閉塞的な状況を、己の才覚と度胸で痛快に打破していく青春映画でもある。

 さらに言えば、社会的格差や行き過ぎた受験戦争、納得のいかないルールの押し付けに対する若者の反抗を描いた社会派映画の側面も大きく、それらをすべて合わせもった社会派娯楽青春映画の会心作である。

 教師の娘であまり裕福で無い父子家庭のリンは、その頭脳で金持ちの子弟が多い進学校に入ることができる。彼女のような階層の子でも、勉強ができれば奨学金や海外留学などの有難い制度もあるが、それらはすべて点数次第であり、それによってしか上に進めない。一方で、お気楽な金持ちのパットやグレースは、演劇に出たい、車を買ってもらいたいなどの理由で、タイでは珍しくないカンニングで点数を上げようとリンに相談を持ち掛ける。

 カンニングは、自分の机からは動けないという物理的条件に加え、制限時間や厳しい監視、他の生徒からの疑惑の目などの制約と、突発的行動によるトラブルの可能性から、銀行強盗ものや詐欺ものに負けないくらいの緊張感が画面にみなぎる。見事なエンタテインメントとなっている。

 過当な受験戦争が生む過激なカンニングビジネスは、決して許されることではないが、点数では評価できないタイプの学問が得意な子や、豊かな人間性の部分に着目しない押し付けられたルールに対するアンチテーゼであり、反逆なのである。

 ラストは、倫理とのバランスをとったオチで仕方がないと思うが、やくざ映画の最後は御用となるお約束と同じで、映画の爽快感を決して損ねるものではない。とにかく面白い映画だ。

語り手:ドラゴン美多

中学三年の時に見た「日本沈没」「燃えよドラゴン」のあまりの面白さから映画の虜になって四十数年、今も映画から夢と希望と勇気をもらっている、ファッションチェックに忙しい中年のおっさんです。

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語り手:ドラゴン美多

中学三年の時に見た「日本沈没」「燃えよドラゴン」のあまりの面白から映画の虜になって四十数年、今も映画から夢と希望と勇気をもらっている、ファッションチェックに忙しい中年のおっさんです。

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