岐阜新聞 映画部

いま、どこかで出会える作品たち

Meet somewhere

個性を貫いて生きていく事の大切さがよく分かる、素敵なドキュメンタリー

2018年11月23日

劇場版シネマ狂想曲 名古屋映画館革命

©メ~テレ

【ナレーション】竹中直人
【出演】坪井篤史、木全純治、白石晃士、松江哲明、カンパニー松尾、井口昇、前田弘二、宇野祥平、内藤瑛亮、直井卓俊、栗栖直也、森裕介、大浦奈都子
【監督・撮影・編集】樋口智彦

坪井さんは、マニアの枠を超えた映画の発掘師

 1970年前後、最も熱かった頃の若松プロに集まる、尖がった若き映画製作人達を描いた『止められるか、俺たちを』(白石和彌監督)では、足立正生や荒井晴彦など多くの奇人才人の活躍が描かれていた。映画制作で既存の体制をブチ壊してきた若松孝二が、映画興行の世界でも大手寡占体制に挑んでいたのが、名古屋駅西の映画館シネマスコーレである。

 彼の意をくんだ木全支配人が、アジア映画やインディーズ映画を中心に、時折一般の映画館ではやれないタブーに触れた映画を上映していたが、そこにいつからか誰も知らないようなB級映画が番組されるようになった。その犯人こそ、この映画の主役である映画館の妖精、副支配人の坪井さんなのである。

 映画の冒頭で描かれる「アメカル映画祭」は、もう15年以上続いているトークイベントだ。機関銃のように発せられる映画に関する言葉の数々は、某シネコン支配人の森さんの絶妙の合いの手により、B級映画が瞬く間に記憶に残る作品に変貌してくる。それはあたかも淀川長治さんの語りの如く、映画本編よりもずっと面白く語られる。ゴミのような映画も、愛こそすべてなのである。

 映画は中盤、膨大なVHSコレクションを映し出す。バブルを経てきたVHSは、片っ端から映像化してきたためゴミ映画の宝庫となっているが、そんなジャンク寸前の無名の映画をレンタルビデオ店の墓場コーナーから救い出し、アメカル映画祭で語り尽くす。坪井さんは、マニアの枠を超えた映画の遺跡発掘師なのである。

 終盤のパンツ一丁で暴れまくる「超次元絶叫システム」まで、坪井さんの情熱がほとばしっているが、草食系なので汗臭さは一切感じられない。

 「スクリーンを破る以外何をやってもいい」という懐の深い木全さんの下で、自分の資質をどんどん伸ばしていった坪井さん。個性を貫いて生きていく事の大切さがよく分かる、素敵なドキュメンタリーである。

語り手:ドラゴン美多

中学三年の時に見た「日本沈没」「燃えよドラゴン」のあまりの面白さから映画の虜になって四十数年、今も映画から夢と希望と勇気をもらっている、ファッションチェックに忙しい中年のおっさんです。

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語り手:ドラゴン美多

中学三年の時に見た「日本沈没」「燃えよドラゴン」のあまりの面白から映画の虜になって四十数年、今も映画から夢と希望と勇気をもらっている、ファッションチェックに忙しい中年のおっさんです。

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