岐阜新聞 映画部

いま、どこかで出会える作品たち

Meet somewhere

作戦決行までの連合国間の緊迫の駆引き

2018年09月17日

チャーチル ノルマンディーの決断

©SALON CHURCHILL LIMITED 2016

【出演】ブライアン・コックス、ミランダ・リチャードソン、ジョン・スラッテリー、エラ・パーネル、ジェームズ・ピュアフォイ ほか
【監督】ジョナサン・テプリツキー

伝説の政治家の孤独と哀愁

 春に公開された『ウィンストン・チャーチル ヒトラーから世界を救った男』(ジョー・ライト監督)は、第二次大戦開戦直後の1940年、ナチスドイツの攻勢に苦悩するイギリスを舞台に、その難局を乗り切るために首相に就任したチャーチルが描かれている。チャーチルはゲイリー・オールドマンが演じ、アカデミー賞の主演男優賞に輝いた。チャーチルとは体型を含めた容姿が全く違うオールドマンを見事に変身させた、特殊メイクアップアーティストの辻一弘は、その仕事で同じくアカデミー賞のメイクアップ(&ヘアスタイリング)賞を受賞した。これは広くニュースでも取り上げられたから、記憶している方も多いだろう。

 本作『チャーチル ノルマンディーの決断』(ジョナサン・テプリツキー監督)は、その副題にあるように、大戦末期1944年6月の“ノルマンディー上陸作戦”前夜を描いている。チャーチルを演じたのはブライアン・コックスで、こちらはほとんどノーメイクで演じた。ほかの登場人物も妻のクレメンティーン、国王ジョージ6世、新人秘書など重複が多く、いやが上にも比較したくなる。

 新人秘書はミス・ギャレットで、口述筆記のタイプミスを頭ごなしに怒鳴りつけられたりするところは、2作とも同様に描かれているが、時代設定も違うから、当然、役名も異なる。国王ジョージ6世のチャーチルへの気遣いは同様に描かれているが、エピソードは別もの。

 妻クレメンティーン(ミランダ・リチャードソン)は、朝からスコッチを水代わりにあおる夫をよく思ってはおらず、政治的な立場を判断できないことにもあからさまに苛立ちを見せ、恐妻ぶりが強調されている。

 チャーチルは軍人時代の失敗のトラウマを引きずる弱い一面と、主張を譲らない強情さで、その個性は明確に描かれているが、政治力が落ち、存在感は薄れ、孤独と老いが色濃い。

語り手:覗き見猫

映画にはまって40数年。近頃、めっきり視力が衰えてきましたが、字幕を追う集中力はまだまだ大丈夫です。好きなジャンルは? 人間ドラマ…面白くない半端な回答…甘い青春映画も大好きです。

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語り手:覗き見猫

映画にはまって40数年。近頃、めっきり視力が衰えてきましたが、字幕を追う集中力はまだまだ大丈夫です。好きなジャンルは? 人間ドラマ…面白くない半端な回答…甘い青春映画も大好きです。

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