岐阜新聞 映画部

いま、どこかで出会える作品たち

Meet somewhere

『ボーダーライン』の脚本家は監督としても一流だった

2018年09月13日

ウインド・リバー

©2016 WIND RIVER PRODUCTIONS, LLC. ALL RIGHTS RESERVED.

【出演】ジェレミー・レナー、エリザベス・オルセン、ギル・バーミンガム、ジョン・バーンサル、ジュリア・ジョーンズ、ケルシー・アスビル、ジェームズ・ジョーダン
【監督・脚本】テイラー・シェリダン

監督が伝えたかったネイティブアメリカンの事実とは

 メキシコの麻薬カルテルの実態と、善悪の境界を越えていくFBI女性捜査官の心理を、巧みな構成で表現した『ボーダーライン』(ドゥニ・ヴィルヌーヴ監督)で脚本家デビューしたテイラー・シェリダンの初監督作品『ウインド・リバー』は、スリリングでサスペンスフルな一級の現代西部劇となっており、監督としても一流である事が証明された。

 この映画の舞台であるウインド・リバーは、ネイティブアメリカンの保留地である。アメリカの人口が増えるにつれ、新たな入植者は西部に向かっていったわけだが、そこで暮らしていた先住民族は、アメリカ政府によって「保留地」と言われる辺境の地へ強制移動させられた。そのほとんどは狩猟にも農耕にも適さない土地であった。

 ウインド・リバーもまさにそういう土地であり、警察官は広大な地域に6人しかおらず、そのため犯罪が起こっても捜査もままならず、多くが未解決になってしまう。これが世界の警察を自負するアメリカの現実なのである。シェリダン監督は、この事実を知らしめようとしているのだ。

 物語は深い雪の中で死んでいた少女の死の真相を追求していくというシンプルな構造だが、過酷な環境の中で強者しか生き残れないという残酷さや、マイノリティのおかれた現状を、過不足なく入れ込んでおり、映画を深くさせている。

 また心にトラウマを抱えたハンターのコリー(ジェレミー・レナー)とFBI新米女性捜査官ジェーン(エリザベス・オルセン)とのバディムービーにもなっており、次第に信頼し合っていく様や、協力して悪を倒していくところなど、西部劇の王道をいっている。特に、悪党一味との激しい銃撃戦のシーンなどは、様々な撮り方の工夫で緊張感が持続し、飽きることなく見せてくれる。

 クライマックスの「眼には眼を」という決着は重い判断だが、少女の無念を思うと妥当であろう。全体に抑制の効いた演出で、緊迫感のある映画となった。

語り手:ドラゴン美多

中学三年の時に見た「日本沈没」「燃えよドラゴン」のあまりの面白さから映画の虜になって四十数年、今も映画から夢と希望と勇気をもらっている、ファッションチェックに忙しい中年のおっさんです。

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語り手:ドラゴン美多

中学三年の時に見た「日本沈没」「燃えよドラゴン」のあまりの面白から映画の虜になって四十数年、今も映画から夢と希望と勇気をもらっている、ファッションチェックに忙しい中年のおっさんです。

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