岐阜新聞 映画部

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フジコ・ヘミングの2年間を追いかけた、キュートでチャーミングなドキュメンタリー

2018年09月03日

フジコ・ヘミングの時間

©2018「フジコ・ヘミングの時間」フィルムパートナーズ

【出演】フジコ・ヘミング、大月ウルフ
【企画・構成・撮影・編集・監督】小松莊一良

ある時はピアノが大好きな少女、ある時は孤高でストイックなピアニスト

 60代後半になってから突然脚光を浴び、80歳を超えた今も年間60本以上の演奏活動を続けるピアニスト、フジコ・ヘミングの2年間を追いかけた、キュートでチャーミングなドキュメンタリー映画だ。

 フジコの弾くピアノは、多少のミスタッチなど物ともせず、独自の解釈を伴ったパッションある演奏で聴くものを魅了する。ドビュッシーの「月の光」やリストの「ラ・カンパネラ」など得意な曲を弾く時の彼女は、ピアノが大好きな少女のように見えてくる。

 ツアーでは、その会場に設置されたいろいろなピアノと出会う。常に最善の状態を保っているピアノもあれば、南米ツアーで出くわした調律が悪く、硬くて響かないピアノもある。彼女はそれらのピアノに命を吹き込み、生き返らせる。文句は言えど、弘法筆を選ばずの如く、素晴らしい演奏でスタンディングオベーションの喝采を受けた後の「手が真っ黒になった。誰も弾いてないってことでしょ」との毒舌は、人間的な部分と、そんなピアノでも弾きこなせた自信溢れる姿を暖かくとらえている。

 ピアニストとして孤高でストイックなフジコは、ライフスタイルも大切にする。パリや京都やサンタモニカには、お気に入りのアンティークや可愛い猫に囲まれた自宅があり、そこではお洒落なファッションに身を包み、それぞれの都市での生活を楽しんでいる。若い頃に新進ピアニストとして売り出したが、その後の40年間は苦労の連続で困窮生活を送っていたわけだが、彼女の口はそのことをさらっと流す。カッコいい事この上ない。

 スウェーデン人を父に、日本人を母に持つフジコの、少女時代の絵日記が開かれる。幼い頃に帰国し音沙汰がなかった父。女手一つで、スパルタ教育で厳しく育てた母。広告デザイナーの父が当時手掛けたポスターを見る彼女の眼は、遠き昔の少女時代を懐かしみつつ「アラウンド・ザ・ワールド」の図柄に、父の面影を感じとっているのだ。

語り手:ドラゴン美多

中学三年の時に見た「日本沈没」「燃えよドラゴン」のあまりの面白さから映画の虜になって四十数年、今も映画から夢と希望と勇気をもらっている、ファッションチェックに忙しい中年のおっさんです。

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語り手:ドラゴン美多

中学三年の時に見た「日本沈没」「燃えよドラゴン」のあまりの面白から映画の虜になって四十数年、今も映画から夢と希望と勇気をもらっている、ファッションチェックに忙しい中年のおっさんです。

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