岐阜新聞 映画部

映画にまつわるエトセトラ

Rare film pickup

井筒監督の作品は、骨太で破天荒。物騒でトラウマになる迫力だ

2021年03月24日

『ガキ帝国』との出会いから『無頼』まで

©2020「無頼」製作委員会/チッチオフィルム

関西から強烈な個性の映画が殴りこんできた

 私が高3だった1976年、大ファンだった水谷豊が主演の『青春の殺人者』は、長谷川和彦監督(30歳)のデビュー作で、いきなりキネ旬ベストワン。洋画の1位『タクシー・ドライバー』と共に、無様でストイックなアンチヒーローの姿は、高校生の私に大きな衝撃を与えた。

 映研に入った大学時代は、寅さん映画や角川映画も楽しみつつ、長谷川に続く、日活や独立プロ・自主映画出身の若手監督たちの作品を追っかけ始めた。

 石井聰亙『高校大パニック』、大森一樹『オレンジロード急行』、池田敏春『天使のはらわた 赤い淫画』、相米慎二『翔んだカップル』、黒沢清『神田川淫乱戦争』、高橋伴明『TATTO<刺青>あり』、根岸吉太郎『狂った果実』、森田芳光『の・ようなもの』・・彼らが作る挑戦的かつ刺激的で作家性の強い映画群は、私をますます映画の世界に引きずり込んでいった。

 そこへ関西から強烈な個性の映画が殴りこんできた。

 漫才ブームの中心にいた"ツッパリ漫才"の紳助・竜介が主演で、大阪のヤンチャな若者たちがケンカや遊びにあけくれる青春群像劇『ガキ帝国』(1981)だ。河内弁でまくしたてるセリフと、アナーキーかつ疾走感あふれる展開は見たことのない新鮮さで、私の眼前に現れた。

 監督は、若干28歳の井筒和幸さん。大須名画座で見た「女教師」大会の中の1本『女教師 覗かれた暴行現場』の監督だった。

そこから追っかけていった井筒映画。彼の東宝や角川のアイドル映画も面白かったが、私の心を揺さぶったのは、やはり骨太で熱量一杯で破天荒な青春映画だった。

 勢いのある若手芸人が、テンポのいいせりふ回しでヤンキー達の日常を描く『岸和田少年愚連隊』。在日コリアンを中心に据え、ケンカと恋と友情で綴る不良性感度抜群の『パッチギ!』。些細なことから究極の暴力に発展する、アメリカンニューシネマのような『ヒーローショー』。みんな物騒で、トラウマになるような迫力だ。

 一方でその対極にある『のど自慢』とか、私の地元蒲郡が舞台の『ゲロッパ!』のようなヒューマニティ溢れる人情喜劇には心を癒され、どっちが本当の井筒さん?という感じだった。

 そして8年ぶりの新作は『無頼』。昭和の匂いがプンプンする、エネルギーに満ち溢れたこの作品は、暴力団というより愚連隊と呼ぶのが相応しい年代記だ。私の2020年ベストテン第6位。井筒監督の集大成である。

語り手:ドラゴン美多

中学三年の時に見た「日本沈没」「燃えよドラゴン」のあまりの面白さから映画の虜になって四十数年、今も映画から夢と希望と勇気をもらっている、ファッションチェックに忙しい中年のおっさんです。

©2020「無頼」製作委員会/チッチオフィルム

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語り手:ドラゴン美多

中学三年の時に見た「日本沈没」「燃えよドラゴン」のあまりの面白から映画の虜になって四十数年、今も映画から夢と希望と勇気をもらっている、ファッションチェックに忙しい中年のおっさんです。

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