岐阜新聞映画部映画館で見つけた作品ファイティン! B! 家族愛に溢れた健気でいじらしい姿を描いた秀作 2018年12月08日 ファイティン! ©2018 Warner Bros. Ent. All Rights Reserved 【出演】マ・ドンソク、クォン・ユル、ハン・イェリ 【監督・脚本】キム・ヨンワン 新鋭キム・ヨワン監督が映画に込めた思いとは 儒教的規範を基盤とする父系社会の韓国では、婚外子を生んだ母親は蔑視されるため、子どもを海外に養子に出すという文化があるらしい。さらに、そもそもシングルマザーは、父系社会からははじき出される。 子どもの頃にアメリカに養子に出されたマーク(マ・ドンソク)と、二人の子持ちのシングルマザー・スジン(ハン・イェリ)という韓国では蔑みの目で見られる両人を中心に、韓国スポーツ界を揺るがし続けている八百長試合に誘いこもうとする顔なじみのジンギ(クォン・ユル)を絡めた、アームレスリングチャンピオン・マークの家族愛に溢れた健気でいじらしい姿を描いた秀作である。 日本と同じように新しい格差社会が生まれ、それが固定化されつつある韓国社会。スポーツによる一発逆転は、そこから抜け出す一つの手段である。 本作は、かつてアームレスリングで輝いていたマークが、遠い故郷の韓国で瞼の母を探しつつ、真剣勝負でもう一度チャンピオンを目指していく姿を直球勝負で描いていく。 養子に出さざるを得なかった実母の、子を想う気持ち、深い悲しみを知ったマーク。度重なるトラブルを乗り越え、スジンやジンギとの絆も深まっていく様子は、「気は優しくて力持ち」をそのまま演ずるマ・ドンソクの好演により、わざとらしさがなく、素直で爽やかな感動を呼ぶ。 この映画の最大の見どころであるアームレスリングのシーンは、マ・ドンソクの50cmはあるボディビルダーのような上腕筋による圧倒的な肉体とパワーで、有無を言わさぬ迫力と説得力があり、緊迫感があふれている。個性豊かな対戦相手と闘いを重ねていきつつ成長していく物語は、スポーツ映画の王道をしっかり踏まえていて、感動のフィナーレに持っていく。 新鋭キム・ヨワン監督は、偏見にさらされている人達を主役にした痛快スポーツ映画で、娯楽として楽しみながら、問題を感じて欲しいと願いを込めているのである。 語り手:ドラゴン美多中学三年の時に見た「日本沈没」「燃えよドラゴン」のあまりの面白さから映画の虜になって四十数年、今も映画から夢と希望と勇気をもらっている、ファッションチェックに忙しい中年のおっさんです。 100% 観たい! (7)検討する (0) 語り手:ドラゴン美多中学三年の時に見た「日本沈没」「燃えよドラゴン」のあまりの面白から映画の虜になって四十数年、今も映画から夢と希望と勇気をもらっている、ファッションチェックに忙しい中年のおっさんです。 2024年04月24日 / ピアノ・レッスン 4Kデジタルリマスター 4Kで甦る 憎悪の泥に塗れた官能的な愛の物語 2024年04月24日 / ピアノ・レッスン 4Kデジタルリマスター ジェーン・カンピオン監督の最高傑作、完璧な作品 2024年04月24日 / RED SHOES/レッド・シューズ オーストラリア発バレエ舞台の成長物語 more 2018年10月17日 / シネ・ヌーヴォ(大阪府) 薔薇をモチーフとした外観が目印の映画館 2019年08月21日 / 松竹座(香川県) 名作『二十四の瞳』の舞台で、映画に浸る一日を過ごす 2020年12月09日 / 第七藝術劇場(大阪府) ディープな街、十三にある個性派ミニシアター more
新鋭キム・ヨワン監督が映画に込めた思いとは
儒教的規範を基盤とする父系社会の韓国では、婚外子を生んだ母親は蔑視されるため、子どもを海外に養子に出すという文化があるらしい。さらに、そもそもシングルマザーは、父系社会からははじき出される。
子どもの頃にアメリカに養子に出されたマーク(マ・ドンソク)と、二人の子持ちのシングルマザー・スジン(ハン・イェリ)という韓国では蔑みの目で見られる両人を中心に、韓国スポーツ界を揺るがし続けている八百長試合に誘いこもうとする顔なじみのジンギ(クォン・ユル)を絡めた、アームレスリングチャンピオン・マークの家族愛に溢れた健気でいじらしい姿を描いた秀作である。
日本と同じように新しい格差社会が生まれ、それが固定化されつつある韓国社会。スポーツによる一発逆転は、そこから抜け出す一つの手段である。
本作は、かつてアームレスリングで輝いていたマークが、遠い故郷の韓国で瞼の母を探しつつ、真剣勝負でもう一度チャンピオンを目指していく姿を直球勝負で描いていく。
養子に出さざるを得なかった実母の、子を想う気持ち、深い悲しみを知ったマーク。度重なるトラブルを乗り越え、スジンやジンギとの絆も深まっていく様子は、「気は優しくて力持ち」をそのまま演ずるマ・ドンソクの好演により、わざとらしさがなく、素直で爽やかな感動を呼ぶ。
この映画の最大の見どころであるアームレスリングのシーンは、マ・ドンソクの50cmはあるボディビルダーのような上腕筋による圧倒的な肉体とパワーで、有無を言わさぬ迫力と説得力があり、緊迫感があふれている。個性豊かな対戦相手と闘いを重ねていきつつ成長していく物語は、スポーツ映画の王道をしっかり踏まえていて、感動のフィナーレに持っていく。
新鋭キム・ヨワン監督は、偏見にさらされている人達を主役にした痛快スポーツ映画で、娯楽として楽しみながら、問題を感じて欲しいと願いを込めているのである。
語り手:ドラゴン美多
中学三年の時に見た「日本沈没」「燃えよドラゴン」のあまりの面白さから映画の虜になって四十数年、今も映画から夢と希望と勇気をもらっている、ファッションチェックに忙しい中年のおっさんです。
語り手:ドラゴン美多
中学三年の時に見た「日本沈没」「燃えよドラゴン」のあまりの面白から映画の虜になって四十数年、今も映画から夢と希望と勇気をもらっている、ファッションチェックに忙しい中年のおっさんです。