岐阜新聞 映画部

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天才画家ヒエロニムス・ボスを徹底解剖

2018年02月26日

謎の天才画家 ヒエロニムス・ボス

© Museo Nacional del Prado © López-Li Films

【出演】ラインダー・ファルケンブルグ、オルハン・パムク、サルマン・ラシュディ、セース・ノーテボーム、ルネ・フレミング
【監督】ホセ・ルイス=リナレス

「快楽の園」の謎に迫るドキュメンタリー

 1516年。室町幕府の権勢も微妙になり、世は戦国時代に突入した頃。しかし、まだ、織田信長も豊臣秀吉も徳川家康も生まれてはいない。
 その年の8月9日。オランダの画家ヒエロニムス・ボスは亡くなった。ボスはベルギーとの国境近くの街に生まれたが、生年ははっきりとわかっていない(1450年頃=53年説が有力)。生家は祖父、父、兄弟、おじたちが揃って画家という一族で、門前の小僧よろしく、絵画はその工房で学んだ。1478年には、「自由な画家」という資格を獲得している。当時の画家は、大工や石工と同じく職人としての資格があった。その頃、ボスは、アレイト・ホヤールト・ファン・デ・メルヴェンヌと結婚している。メルヴェンヌは上流階級の富裕層の出身であった。この結婚により、街のキリスト教友愛団体である「聖母マリア兄弟会」に所属、名士としても活動し、会の依頼で絵画制作をした。
 と、画家の生涯を語ってはみたものの、本当のところはよく分かっておらず、ボスが“謎の天才画家” といわれる所以でもある。美術史年表的には、ルネサンス期のフランドル派と分類できるらしいが、そう言われてもよく分からない。
 ボスは広くヨーロッパの王侯貴族からの依頼で絵画制作をし、その一番のお得意先がスペインのフェリペ2世であった。そのため、現存する25点の作品の多くはマドリードにあり、代表作『快楽の園』をはじめ10点がプラド美術館に所蔵されている。映画『謎の天才画家 ヒエロニムス・ボス』はこの作品の徹底解剖を追い、美術、宗教などの様々な研究者がボスの思考、人物像に迫ろうとするドキュメンタリー。如何に知的好奇心を満たしてくれるかが映画の使命。されど、その入口は実に複雑怪奇!?初心者向きとは言えないが、魅惑的ではある。
 “ペイントメント” という言葉は、画家の後悔という意味で使われる。キャンパス地に描かれた作品の下絵が、光線の加減で透けて見えることを言う。X線で画家が消したものまで覗く事は、あまり上品な事ではないが…。

『謎の天才画家 ヒエロニムス・ボス』は岐阜CINEXで3/2(金)まで公開中。

語り手:覗き見猫

映画にはまって40数年。近頃、めっきり視力が衰えてきましたが、字幕を追う集中力はまだまだ大丈夫です。好きなジャンルは? 人間ドラマ…面白くない半端な回答…甘い青春映画も大好きです。

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語り手:覗き見猫

映画にはまって40数年。近頃、めっきり視力が衰えてきましたが、字幕を追う集中力はまだまだ大丈夫です。好きなジャンルは? 人間ドラマ…面白くない半端な回答…甘い青春映画も大好きです。

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