岐阜新聞 映画部

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幽霊が登場する名作戯曲の映画化

2021年09月29日

ブライズ・スピリット~夫をシェアしたくはありません!

© BLITHE SPIRIT PRODUCTIONS LTD 2020

【出演】ダン・スティーヴンス、レスリー・マン、アイラ・フィッシャー、ジュディ・デンチ
【監督】エドワード・ホール

エレガントなコメディもやり過ぎると足がつく

ベストセラー作家のチャールズ(ダン・スティーヴンス)は、スランプと闘っていた。意を決してタイプライターに向かえど、一文字も絞り出すことはできず、物に当たり散らす始末。その原因として思い当たるのはひとつしかない。チャールズはその創作のアイデアを7年前に事故死した前妻のエルヴィラ(レスリー・マン)に依存していたのだった。

原作はノエル・カワードの戯曲で、上演回数は2000回を超える名作戯曲。1945年にデヴィッド・リーン監督によって最初の映画化(日本公開は51年)がされている。リーン監督と言えば『アラビアのローレンス』(62年/日本公開63年)などの大作が思い浮かぶ名匠だが、初期は室内劇を中心にした戯曲の映像化を手がけている。邦題『陽気な幽霊』は軽妙な会話喜劇である。

チャールズの現在の妻ルース(アイラ・フィッシャー)は映画会社のプロデューサーの娘で、依頼されたのは映画の脚本の執筆。ふたりからのプレッシャーは時限付きで、誤魔化すことも限界になっていた。

チャールズが藁を掴む思いですがったのは、公演中の舞台でトリックのネタがバレてしまい、窮地に立たされている霊媒師マダム・アルカティ(ジュディ・デンチ)だった。

屋敷にアルカティアを招き、降霊の儀式を執り行なったが、いんちきを目の当たりにしているチャールズも周囲も、本心では信用していない。偶然(?)に起きた落雷による停電は絶妙の演出となったが、誰も何かを期待しているわけではなかった。

その直後、チャールズの目の前に前妻エルヴィラが現れる。思わぬ再会に驚愕したのも束の間、その存在が自分にしか見えないことを利用して、チャールズは幽霊のエルヴィラと脚本の共同制作を始めるのだった。

幽霊が登場する荒唐無稽なお話を名優たちが嬉々として演じて楽しいし、時代色あふれる美術、装置、衣装は、エレガントな雰囲気の映画に仕上がっているが、ちょっとドタバタが過ぎるのが玉に瑕。

リーン版『陽気な幽霊』は、当時まだ珍しかったテクニカラーで撮影され、登場する幽霊は "テクニカラーゴースト" と呼ばれた。幽霊には足がある。

語り手:覗き見猫

映画にはまって40数年。近頃、めっきり視力が衰えてきましたが、字幕を追う集中力はまだまだ大丈夫です。好きなジャンルは? 人間ドラマ…面白くない半端な回答…甘い青春映画も大好きです。

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語り手:覗き見猫

映画にはまって40数年。近頃、めっきり視力が衰えてきましたが、字幕を追う集中力はまだまだ大丈夫です。好きなジャンルは? 人間ドラマ…面白くない半端な回答…甘い青春映画も大好きです。

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