岐阜新聞 映画部

いま、どこかで出会える作品たち

Meet somewhere

「政治は言葉」であるを体現した映画

2020年12月01日

ムヒカ 世界でいちばん貧しい大統領から日本人へ

© 2020「ムヒカ 世界でいちばん貧しい大統領から日本人へ」製作委員会

【出演】ホセ・ムヒカ、ルシア・トポランスキー
【監督】田部井一真

番組チームのジャーナリズム魂がうずいている

 新型コロナウィルス感染症は世界中で猛威をふるっているが、深刻な状況下のブラジルやアルゼンチンと接するウルグアイは、死者数50人余りと相当に低く抑え込まれている。現地の専門家の声によると、ホセ・ムヒカ大統領とその後任の大統領の時代に、国の公衆衛生が大幅に強化されていったのが大きいとされている。

 そんな後日談など露も思わず、フジテレビの田部井一真さんは、番組の企画でムヒカ大統領にアポなし突撃取材をしてインタビューに成功した上、なんと彼を日本に招待して各地の講演会活動のプロデュースまで行ったのだ。

 本作が、日本ではほぼ同時公開のクストリッツァ版と違うのは、ムヒカと日本の関係に絞った点である。構成も2012年の「リオ会議(Rio+20)」における有名なスピーチから、だんだん彼自身の個人的な話になっていくという流れで、ムヒカの世界的規模の訴えが、日本人としてどのように咀嚼できるのかを考えさせられるつくりとなっているのだ。

 「世界で一番貧しい」という先入観で、一か八かの勝負に打って出た取材班は、初対面のムヒカ大統領から日本への感謝を語られる。驚くクルー。「貧しい」という括り以上の人柄。

 彼ら番組チームは怖いものなしでムヒカに来日を要望する。ワイドショーのりかもしれないが、ジャーナリズム魂がうずいているのだ。

 ムヒカの広島平和祈念資料館での「記憶しよう。未来へ向けて記憶しよう。人間は同じ石でつまずく唯一の動物だと歴史が示しているのだから」との記帳。そして東京外語大での印象的な若者への講演。これはほぼ全部聴くことができ大変貴重な映像だ。

 長男に「歩世(ほせ)」と名付けた田部井監督。この映画でムヒカが発している「人生で一番大事なことは歩み続けることだ」を、まさに具現化している。素敵なネーミングだ。

 言葉を疎かにする政治家が増えている昨今、「政治は言葉」であるを体現した映画だ。

語り手:ドラゴン美多

中学三年の時に見た「日本沈没」「燃えよドラゴン」のあまりの面白さから映画の虜になって四十数年、今も映画から夢と希望と勇気をもらっている、ファッションチェックに忙しい中年のおっさんです。

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語り手:ドラゴン美多

中学三年の時に見た「日本沈没」「燃えよドラゴン」のあまりの面白から映画の虜になって四十数年、今も映画から夢と希望と勇気をもらっている、ファッションチェックに忙しい中年のおっさんです。

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