岐阜新聞 映画部

いま、どこかで出会える作品たち

Meet somewhere

背伸びしてカッコよくブイブイ言わせたかったあの頃を描いたティーンエイジャームービー

2020年11月23日

mid90s ミッドナインティーズ

©A24 Distribution, LLC. All Rights Reserved.

【出演】サニー・スリッチ、キャサリン・ウォーターストン、ルーカス・ヘッジズ、ナケル・スミス
【監督・脚本】ジョナ・ヒル

単なる懐古趣味でない、新しい形の青春映画

 本作は、1990年代半ばのLAを舞台に、無軌道な青春を謳歌しているスケートボーダー達と、不良に憧れる13歳のスティーヴィー(サニー・スリッチ)の、背伸びしてカッコよくブイブイ言わせたかったあの頃を描いた、ヒリヒリするようなティーンエイジャームービーだ。

 私は1970年代の中高時代、いたって普通の文科系少年だったが、映画の中の不良達を見ては「カッコよく行きてえなあ」と憧れていた。現実には絶対ならないし、なれないが、登場人物に仮託してなりきって見ていた。

 映画の冒頭、兄貴イアン(ルーカス・ヘッジズ)にぶっ飛ばされるスティーヴィー。そんな彼は「強くなりたい。男になりたい」と、街の不良グループに恐る恐る近づいていき、めでたく不良デビューを果たす。私はスティーヴィーと一体化し、彼目線で映画に没入する。

 最初に声をかけてくれたのは、グループの一番下っ端ルーベン(ジオ・ガリシア)だ。自分より年下でスケボーも下手糞なスティーヴィーに兄貴風を吹かす。最初は仲良くしてくれてたルーベン。しかし、スティーヴィーが無謀なジャンプに挑戦しものの見事に失敗したことが、かえって勇気を讃えられ、リーダーのレイ(ナケル・スミス)に取り立てられるようになる。チーム内の逆転現象を起こす過程が面白い。

 次第にチーム内で存在感を増してくるスティーヴィー。でも、部屋の中にはスーパーファミコンがあったりして、まだまだ子どもだ。「絶対入るな」と言われた兄貴の部屋でみつけた、ヒップホップの雑誌やエアチェックテープの数々。やっぱり大人だぜと、ミュージシャンや曲名をメモったりする。

 私は長男なので兄貴はいなかったが、強い男には憧れた。筋トレのため密かに「ブルワーカー」を購入した(今でも手元にある)。

 映画は、チームのみんなが置かれた社会的階層や立場の違いも浮き上がらせる。単なる懐古趣味でなく、新しい形の青春映画だ。

語り手:ドラゴン美多

中学三年の時に見た「日本沈没」「燃えよドラゴン」のあまりの面白さから映画の虜になって四十数年、今も映画から夢と希望と勇気をもらっている、ファッションチェックに忙しい中年のおっさんです。

観てみたい

100%
  • 観たい! (9)
  • 検討する (0)

語り手:ドラゴン美多

中学三年の時に見た「日本沈没」「燃えよドラゴン」のあまりの面白から映画の虜になって四十数年、今も映画から夢と希望と勇気をもらっている、ファッションチェックに忙しい中年のおっさんです。

ページトップへ戻る