岐阜新聞 映画部

いま、どこかで出会える作品たち

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青春の1ページを切り取った、等身大のJK映画

2024年09月06日

水深ゼロメートルから

©『水深ゼロメートルから』製作委員会

【出演】濵尾咲綺、仲吉玲亜、清田みくり、花岡すみれ、三浦理奈/さとうほなみ
【監督】山下敦弘

女子高校生特有の「青春の悩み」を吐露していく

『水深ゼロメートルから』は、2019年12月に高知県立美術館ホールで開催された「第44回四国地区高校演劇研究大会」で徳島市立高校演劇部によって上演され、文部科学大臣賞と創作脚本賞を受賞した高校演劇の映画化である。

徳島市立高は偏差値72の県内有数の進学校。当時高校3年生の演劇部の中田夢花さんと顧問の村端賢志先生が共同で書いた戯曲で、見事快挙を成し遂げた。

翌2020年の第44回全国高校総合文化祭で上演予定であったが、コロナ禍で中止となり、代わりに「WEB SOUBUN」でのオンライン上映が決まった。他の学校は「上演の様子を撮影する」方法を選んだが、参加12校中唯一徳島市立高だけは「映画として撮影する」方法を選んだ。川原康臣監督による映画版は、劇場で上映はされてはいないが、YouTubeで観ることができる。映画化はこれが最初なのだ。

その後2021年11月には、下北沢の、「劇」小劇場で、大学生(明治大学)になった中田夢花さん自身の脚色で上演され好評を博した。

本作は、その「劇」小劇場版と、メイクが得意な一軍女子のココロ(濱尾咲綺)、阿波踊りで男踊りがしたいミク(仲吉玲亜)、元水泳部部長のユイ(花岡すみれ)が同じ配役。水のないプールで泳ぎの練習をしているチヅル(清田みくり)は映画版での配役だ。

この4人が主役で、女子高校生特有の「青春の悩み」を、プールの底に積もった砂の掃き掃除をしながら、本音を吐露していく。しかし風が吹けば野球部が練習している校庭の方から砂は飛んできて、何のためにやっているのか無意味さに苛まれてしまう。

YouTubeにアップされている高校演劇版の方もさすがのクオリティだが、山下敦弘監督による本作は、大袈裟な演技やわざとらしいセリフの言い回しもなく、女子高校生のリアルな会話が見事に伝わってくる。青春の1ページを切り取った、等身大のJK映画である。

語り手:ドラゴン美多

中学三年の時に見た「日本沈没」「燃えよドラゴン」のあまりの面白さから映画の虜になって四十数年、今も映画から夢と希望と勇気をもらっている、ファッションチェックに忙しい中年のおっさんです。

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語り手:ドラゴン美多

中学三年の時に見た「日本沈没」「燃えよドラゴン」のあまりの面白から映画の虜になって四十数年、今も映画から夢と希望と勇気をもらっている、ファッションチェックに忙しい中年のおっさんです。

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