岐阜新聞 映画部

いま、どこかで出会える作品たち

Meet somewhere

隣人と繰り広げる疑心暗鬼の騒動記

2024年08月30日

お隣さんはヒトラー?

© 2022 All rights resrved to 2-Team Productions (2004) Ltd and Film Produkcja

【出演】デヴィッド・ヘイマン、ウド・キア、オリヴィア・シルハヴィ ほか
【監督】レオン・プルドフスキー

消えた遺体が引き起こした生存説

1945年、西からは連合軍、東からはソ連軍(=赤軍)に追い詰められたナチスドイツ総統アドルフ・ヒトラーは、ベルリンの総統官邸で孤立していた。日に日に激しくなる空襲と指揮命令系統を喪失し敗戦を悟った4月30日、愛人だったエヴァ・ブラウンと結婚の契りを交し、彼女の服毒自殺を見届けた後、自室で拳銃自殺をしたとされている。遺体は遺言によりガソリンをかけられ燃やされた。

ポーランドで暮らすポルスキーは、最愛の家族と幸せな日々を送っていた…それから15年…。1960年、南米コロンビア。ホロコーストにより家族を失ったポルスキーは、今はひとり、町はずれにある家で、寂しいながらも悠々自適に暮らしている。

ある日、隣家にドイツ人のヘルツォークが引っ越して来る。

ポルスキーは過去の記憶を蘇らせる予感をヘルツォークから感じ取ってしまう。

「彼は死んだはずのヒトラーではないか!」それは確信に変わり、文献を読み漁り、監視カメラを取り付け、それらしい証拠を集めて、ユダヤ人団体にヘルツォークのことを訴えるのだが、相手にはされず、あげくに過去に囚われ過ぎた精神状態を心配されて、自助グループでカウンセリングを勧められる始末。

ひとり相撲で空回りすることポルスキーは、滑稽にすら見えるが、そこには深い傷跡が関係していることも決して見過ごせないのだが…。

そんなポルスキーに火中の人ヘルツォークが声をかけてくる。

ふたりの奇妙な交流がはじまる。チェスをしたり、酒を酌み交わし、昔話に花を咲かせたり。繰り返される疑心暗鬼の波に翻弄され、大いに苦悩するポルスキーは、もはや悲劇の主人公ではなく、喜劇の道化師のようにさえ見える。

かなり変化球気味の反ナチもの映画だが、見せないことで底知れない怖さを感じさせた『関心領域』と同様に、惨劇を見せることなく戦争の無情=無常さを巧みに語っている。

語り手:覗き見猫

映画にはまって40数年。近頃、めっきり視力が衰えてきましたが、字幕を追う集中力はまだまだ大丈夫です。好きなジャンルは? 人間ドラマ…面白くない半端な回答…甘い青春映画も大好きです。

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語り手:覗き見猫

映画にはまって40数年。近頃、めっきり視力が衰えてきましたが、字幕を追う集中力はまだまだ大丈夫です。好きなジャンルは? 人間ドラマ…面白くない半端な回答…甘い青春映画も大好きです。

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