岐阜新聞 映画部

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暗黒の歴史に光をあてた、真実の女性の姿を描いた映画

2024年08月30日

流麻溝十五号

© thuànn Taiwan Film Corporation

【出演】余佩真、連俞涵、徐麗雯、徐韜、莊岳
【監督】周美玲

台湾人も知らなかった、長らくタブーとされていた事件

台湾で約38年間続いた戒厳令が解除されて37年たった今年7月15日、頼総統は「歴史の真相を社会に公表するのは政府が当然負うべき責任だ」と述べた。

台湾では国民党政府により、1949年5月20日から1987年7月14日まで戒厳令が敷かれていた。戒厳令とは治安維持のため憲法や法律の一部を止め、行政権や司法権を軍の下に置く緊急措置であり、この間には、市民の思想や言論を弾圧する「白色テロ」が横行し、多くの人が投獄されたり処刑されたりしていた。

本作は、戒厳令時代の1953年、当局の一方的な理由で思想犯として投獄された女性たちを描いた映画で、タイトルの『流麻溝十五号』とは、彼女たちが収容されていた施設の住所である。長らくタブーとされていた事件で、ようやく取り上げられるようになったのだ。

場所は、台湾南東部・太平洋に浮かぶ緑島(火焼島)で、台東から船で1時間ほどの今はリゾートアイランドとなっている島だ。

映画の主役は、学生組合に参加したことがある絵の得意な高校生で杏子(きょうこ)とも呼ばれているユ・シンホェイ(ユー・ペイチェン)、妹を守るためにスパイだと自首した舞踏団所属のチェン・ビン(リェン・ユーハン)、外部団体への参加や禁止図書の閲覧で収容されている看護師で、厳(げん)さんとも呼ばれているイェン・シュェイシア(シュー・リーウェン)の3人だ。

彼女たちは強制労働や洗脳教育を受けさせられる「新生訓導処」に収容されている。彼女たちに対する施設での虐待は目を覆いたくなる程だが、台湾語、北京語、日本語を巧みに使い分けながら、懸命に生きようとしている姿は美しい。

彼女たちの多くは教師や看護師、学生であり、「台湾には自治が必要だ」との思いは共通している。それが大陸からやってきた国民党政府には気に入らなかったことに間違いない。

暗黒の歴史に光をあてた、真実の女性の姿を描いた映画だ。

語り手:ドラゴン美多

中学三年の時に見た「日本沈没」「燃えよドラゴン」のあまりの面白さから映画の虜になって四十数年、今も映画から夢と希望と勇気をもらっている、ファッションチェックに忙しい中年のおっさんです。

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語り手:ドラゴン美多

中学三年の時に見た「日本沈没」「燃えよドラゴン」のあまりの面白から映画の虜になって四十数年、今も映画から夢と希望と勇気をもらっている、ファッションチェックに忙しい中年のおっさんです。

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