岐阜新聞 映画部

いま、どこかで出会える作品たち

Meet somewhere

無名の男の80年のささやかな生き様

2024年08月26日

ある一生

©2023 EPO Film Wien/ TOBIS Filmproduktion München

【出演】シュテファン・ゴルスキー、アウグスト・ツィルナー、アンドレアス・ルスト、ユリア・フランツ・リヒター
【監督】ハンス・シュタインビッヒラー

幸せとは何か美しく生きるとは何かを問う

1900年初頭のオーストリア、山々が連なる風光明媚なアルプス地方の谷間にある村が舞台。

孤児となったアンドレアス・エッガーは、遠い親戚を頼るかたちで、その地で農場を営むクランツシュトッカーのもとにやって来る。

しかし、そこで待ち受けていたのは、血縁とは無関係に、単なる労働力として扱われる過酷な毎日だった。

そんな虐げられるエッガーのことを、ただひとり気にかけてくれる老婆のアーンルの存在が、辛い時間を和ませてくれる心の支えとなった。

月日はたち、成長したエッガーは、アーンルが亡くなると、すべてのしがらみから逃れるように、農場を出て、日雇い労働者として生きる道を選ぶ。

原作はローベルト・ゼーラーターの同名小説で、80年に渡る歴史背景のもと、無名の男のささやかな生き方を描いた物語は、高く評価され、世界40ヵ国で翻訳出版され、ベストセラーにもなっている。

渓谷では電気工事と観光客をもたらすであろうロープウェイの工事が行われる。エッガーはその仕事に携わることに誇りを感じていた。

そんな時、マリーと出会い、ふたりは結婚し、山奥に建てた木造の小屋で、幸せな日々を送ることになる。

エッガーの人生は3つの年代に分けて、3人の俳優によって演じられている。

8歳のエッガーは、ウクライナ生まれのイヴァン・グスタフィクで、悲運を背にしながらも健気に生きる少年を見事に表現している。

青年期の18歳から47歳までは、オーストリア生まれのシュテファン・ゴルスキーで、舞台で培われた繊細な表現が出色で、戦争に従軍し、ソ連の捕虜となる激動期を見事に演じている。

壮年期の60歳から80歳は、アウグスト・ツィルナーが、幅広い経歴を持つ存在感で見事に締めている。

無名の男の物語ではあっても、そこに散りばめられた愛や生きる糧の存在は万人に通じ、観るものの心に届く。

語り手:覗き見猫

映画にはまって40数年。近頃、めっきり視力が衰えてきましたが、字幕を追う集中力はまだまだ大丈夫です。好きなジャンルは? 人間ドラマ…面白くない半端な回答…甘い青春映画も大好きです。

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語り手:覗き見猫

映画にはまって40数年。近頃、めっきり視力が衰えてきましたが、字幕を追う集中力はまだまだ大丈夫です。好きなジャンルは? 人間ドラマ…面白くない半端な回答…甘い青春映画も大好きです。

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