岐阜新聞 映画部

いま、どこかで出会える作品たち

Meet somewhere

2人の名優が、素晴らしい演技力で観客を魅了する

2024年08月26日

大いなる不在

©2023 CREATPS

【出演】森山未來、真木よう子、原日出子/藤竜也
【監督・脚本・編集】近浦啓

『大いなる不在』は、「偉大なる不在」なのだ

認知症を扱った映画は、母が認知症ということもあり他人ごとではない。

若年性アルツハイマーを題材にした渡辺謙さん主演の『明日の記憶』(2006/キネ旬8位)には衝撃を受けたし、CINEXで上映された作品でも、アンソニー・ホプキンスがアカデミー賞主演男優賞を受賞した『ファーザー』(2020/キネ旬5位)や、日本では今年公開された認知症を利用した韓国製サスペンス『ビニールハウス』(2024)など傑作も多い。

日本製ドキュメンタリーでは、信友直子監督のトークショーもあった『ぼけますから、よろしくお願いします。~おかえり お母さん~』(2022)が私にとって大切な作品となっている。

『大いなる不在』は父の認知症を描いた映画であるが、幼少期に両親の離婚で疎遠になっていた父と息子の話というのが今回のパターンだ。元大学教授の父・陽二を演じているのが藤竜也さん(82歳)、息子で大河ドラマにも出たことがある役者・卓を演じているのが森山未來さん(39歳)。2人とも名優であり、本作でも素晴らしい演技力で観客を魅了する。

警察の特殊部隊が陽二の家を取り囲むというセンセーショナルなシーンから始まってビックリさせられるが、監督の近藤啓さんが自ら書いた脚本には、大仰であったり辻褄が合わなくなるシーンはなく、映画は淡々と進んでいく。現在と過去を行きつ戻りつするうちに、観客に示された謎は少しずつ解けていくという見せ方はとてもうまく、ありきたりなサスペンスとは一線を画している。

父・陽二は、入居した施設の中で息子の卓と会うときは、いつもスーツを身に着けている。ダンディでカッコよかった頃の面影があるが、浮いているところが悲しい。

「拉致されて収容されている」と語る父には威厳がある。もうそれでいいような気がする。

題名の『大いなる不在』は、「偉大なる不在」であり、父子の繋がりを探っていくことなのだ。

語り手:ドラゴン美多

中学三年の時に見た「日本沈没」「燃えよドラゴン」のあまりの面白さから映画の虜になって四十数年、今も映画から夢と希望と勇気をもらっている、ファッションチェックに忙しい中年のおっさんです。

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語り手:ドラゴン美多

中学三年の時に見た「日本沈没」「燃えよドラゴン」のあまりの面白から映画の虜になって四十数年、今も映画から夢と希望と勇気をもらっている、ファッションチェックに忙しい中年のおっさんです。

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