岐阜新聞 映画部

いま、どこかで出会える作品たち

Meet somewhere

作家佐藤愛子原作随筆の実録映画

2024年08月26日

九十歳。何がめでたい

Ⓒ2024映画「九十歳。何がめでたい」製作委員会 Ⓒ佐藤愛子/小学館

【出演】草笛光子、唐沢寿明/藤間爽子、片岡千之助、中島瑠菜、オダギリジョー、清水ミチコ、LiLiCo、宮野真守、石田ひかり、三谷幸喜、木村多江、真矢ミキ
【監督】前田哲

お手本にはならないけど勇気はもらえる

そのまんま、作家・佐藤愛子の生き方。

数々の文学賞に輝き、読者も獲得し、輝かしき作家生活をしていた佐藤愛子は、90歳を超えた今、筆を折る決断をして、世間とも距離を置く生活を自ら選択したが、安定安心からは程遠い世情に苛立ち、鬱々とした日常を過ごしていた。

そんな、ある日。彼女のもとに、編集者の吉川が訪ねて来て、随筆の執筆を依頼される。

佐藤愛子は、1923(大正12)年、大阪に生まれた。父は小説家の佐藤紅緑(こうろく)、母は女優の三笠万里子で、その次女だった。異母兄には詩人のサトウハチローと、脚本家、劇作家の大垣肇がいる。

佐藤愛子の代表作「血族」(1989〜2000年/講談社)は、佐藤家三代に渡る荒ぶる家族の物語だが、放蕩で破滅型の一族の男たちが描かれるなか、肇・兄だけは実直な人物として登場する。

1943(昭和18)年、最初の夫となる森川弘と見合結婚し、2児を授かるが、夫婦生活は順風とはいかず、夫は従軍中におぼえたモルヒネ中毒が、復員敗戦後も治らず、別居を余儀なくされ、51年に死別する。(子ども2人は夫方に引き取られる)

母から勧められ小説を書き始め、50年に処女作「青い果実」を同人雑誌に発表したが、まもなく創作に挫折し、病院勤務を体験した。後にも先にも作家以外の職についたのはこの時だけだった。

56年、同人誌の仲間でもあった田畑麦彦と再婚し、その頃から小説の執筆も本格化する。60年には2度芥川賞候補になったものの、何故か、仕事の依頼は随筆に傾いた。

夫・田畑の事業の失敗を期に、68年に離婚。その翌年に発表した「戦いすんで日が暮れて」で直木賞を受賞した。この小説は田畑の借金返済の東奔西走の姿をモデルにしている。

吉川の勢いに押されて書いた随筆は、生きづらい世の中への怒りを素直に吐露した内容が反響を呼びベストセラーとなる。

まさに、同年90歳の草笛光子が佐藤愛子を見事に体現、人生100年時代を象徴する、高齢社会の生き方を提示する猛暑吹き飛ぶ爽快映画である。

語り手:覗き見猫

映画にはまって40数年。近頃、めっきり視力が衰えてきましたが、字幕を追う集中力はまだまだ大丈夫です。好きなジャンルは? 人間ドラマ…面白くない半端な回答…甘い青春映画も大好きです。

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語り手:覗き見猫

映画にはまって40数年。近頃、めっきり視力が衰えてきましたが、字幕を追う集中力はまだまだ大丈夫です。好きなジャンルは? 人間ドラマ…面白くない半端な回答…甘い青春映画も大好きです。

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